子犬45日齢のT・プードルを買いました。もうすでに1ヶ月になります。 体を痒がっているのでお風呂に入れてやりたいのですが、本には「最後のワクチンを打ってから3週間ぐらいたってから」と書いてありました。それまでお風呂を避けた方が良いのでしょうか? また別の本には「犬はあまりお風呂に入れない方が良い。1ヶ月に1回ぐらいが適当」とも書いてありました。 お風呂の入れ方なども含めて教えてください。
福岡市 T・プードル ココちゃんファミリー
ココちゃんですか?T・プードルの2ヶ月齢前後の子犬は、本当にマンガに出てくる子ヒツジのようにムックリとした感じに見えますが、時には背筋中央をさわったりお腹を両サイドからゆっくりと押してみて、フードをしっかり食べているかチェックしてみてくださいね。子犬のお腹はふっくらドテッとしているくらいがちょうど良いのです。 さて、子犬のお風呂の事ですね。良うござんすよ!!お教えいたしましょう。次の順にお話します。
子犬のお風呂はいつからいれていいいのか? Q10722
結論から言うと「いつお風呂に入れても問題ありません。」よく聞く話に「子犬の時のワクチンを全部済ませて、3週間してから入れてください。と本に書いてあった」という話。これが正しいという根拠は、全く見あたりません。「特別な病気に対する免疫(ワクチン接種を受けることでできる免疫)ができてからお風呂に入れるべきだ。」という意味だと解釈できますが、子犬をお風呂に入れることで、それらの病気にかかるとは考えられないからです。
子犬をお風呂に入れる主たる目的は、
- 子犬の皮膚表面の汚れを取ってあげること。
- 皮膚を清潔に保つことで皮膚病を予防することです。
つまり、前記の目的のためには、汚れがあったらすぐに洗ってあげる事が重要です。それが子犬であればお尻が汚れる、糞を踏んづける、ごはんやミルクが顔につく、など日常的にあることなので、生後すぐの段階から必要ならいつでもお風呂に入れても良いのです。
人間の赤ちゃんも産まれた時に産湯に入ります。そして身に付いている粘液などをきれいに洗い流すのです。犬の場合も同じで、お尻や尾についた胎便(胎児の時の便)などを洗い落としてやることも、時には必要な事です。
例えばペットショップでウンコまみれの子犬を見た事がありますか?ペットショップでは、毎日商品である子犬を洗ってキレイにしているのです。
〔結論〕あなたが洗ってやりたいと思う時、いつでもお風呂に入れてかまいません。
お風呂の回数 頻度は? Q10723
私が獣医師になりたての頃に読んだ本には、「1ヶ月に1回」とか、「犬・猫はあまりお風呂に入れない方が良い」というような事が書いてありました。
25年以上も前に書かれた本です。古い本で古い考え方です。今時、このような事を言っていると「アホちゃいまっか?」と言われてしまいます。現在では犬猫の皮膚の研究も進み、犬猫用のシャンプーの改革がなされ、人用セッケンや人用シャンプーの延長線上に犬猫用シャンプーがあるのではなく、人用とは違った概念で犬猫用シャンプーが研究され製造されています。その意味で「専用シャンプー」を、その目的にあった用途に適切に使用されるのであれば、毎日シャンプーしても問題にはなりません。私も事実、ある種の皮膚病に対しては「毎日シャンプーしなさい」とか「3日に1回シャンプーしなさい」とかの指示を出します。もちろんその時には「このシャンプーをこういうふうに使用しなさい」という指示も当然、同時に出しています。現在の獣医学では、皮膚病の治療にシャンプー剤の選択は欠かせないものです。
話は変わりますが、テレビを見ていたら和田アキ子が出ている「リーブ21」というコマーシャルに登場する社長も、同じ事を言っているな!!と気付きました。ひょっとして「リーブ21はリーブ・ニャンワンと読むのじゃないか?」とちょっと考えてみました。
さて、この項の結論です。
- 犬のシャンプー頻度は7~10日間隔に1回、少なくとも2週間に1回、またはそれ以上の頻度でお風呂に入れてシャンプーをしてやりましょう。
- 湿疹のできやすい子やアトピー性皮膚炎のある子は、シャンプー回数を週2回程度にまで増やすと、かなり皮膚病の予防や痒みの改善につながります。もちろん、それぞれの症状に合ったシャンプー剤を使用してください。また、後に書いておきます「上手な入れ方」をご参照ください。
- 汚れ落としのシャワーや行水(シャンプーをしないお風呂)なら毎日でも問題ありません。
- 皮膚についたウンコやオシッコで汚れた部分は、すぐに洗い落としてやることが当然必要なことです
お風呂の上手な入れ方(子犬編) Q10724
子犬編とは、生後4ヶ月齢ぐらいまでの子犬のお風呂の入れ方についてお話致します。
新生子犬~離乳まで
- 生後すぐから離乳までの、いわゆる新生子犬のお風呂は、多くの場合「部分洗い」です。それは生後2週齢ぐらいまでは、全て母犬がその子の面倒を見るからです。但し、何かの都合で母犬が面倒を見られない場合があります。その時、お尻や手足や目の周辺を洗ってあげる必要があります。
- 洗い湯の温度は35℃前後のぬるま湯で洗ってください。長洗いせずすみやかにタオルで拭き取り、ドライヤーで乾燥させてください。
- ドライヤーも低めで35℃以下の微温風です。ドライヤーの音に早くからなじませておくのも良い事です。
- シャワーは早すぎます。洗面器にお湯をはって、片手で犬のお腹を支えながらの行水(ぎょうずい)洗いをしてください。
離乳~4ヶ月齢ぐらいまで
この頃で最も重要な事は、動物にお風呂が気持ちの良いもの、楽しいもので、決して恐ろしいものではないということを教える事です。
- 生後2ヶ月齢ぐらいまでは部分洗いが基本です。汚れたらその部分を速やかに洗ってあげましょう。
- お湯で毛が濡れた時に「皮膚の表面にカサブタや湿疹が無いか?」の確認もしましょう。
- 洗面器を利用しての片手で身を支えた行水(ぎょうずい)洗い方式は、離乳前の子犬の洗い方と同じです。
- お湯の温度は35℃ぐらい、必ず36℃以下の温度で流してください。(ちなみに人のお風呂の温度は42~41℃ぐらいです。)つまりぬるいお湯です。
- この時期の子犬は、ウンコを踏みつけている場合が多いので、尻周り・手足の指・爪・肉球の間をしっかり洗ってあげる必要があります。
- デリケート部分(眼や鼻の周囲・顔のシワ・耳の内側)は、ガーゼにお湯を含ませて洗ってあげましょう。
- 2ヶ月齢を過ぎて足腰がしっかりしてきた子犬にシャワーを使用したい場合は、一旦、手指でシャワー出口をゆっくりふさいだ「こぼれ湯」をかけるようにして流しましょう。
- 洗い終わったらすぐにタオルで拭き取り、ドライヤーで乾燥させてください。
- シャンプー剤は低刺激性のシャンプー剤を選んでください。ノミ取りシャンプーは、この時期の子犬には好ましくありません。
お風呂の上手な入れ方(成犬編) Q10725
ここで言う成犬とは、5ヶ月齢以上の足腰がしっかりしている犬のお風呂の入れ方をお話します。5ヶ月齢になった頃には、もうワンちゃんはシャワーに慣れてきているでしょう。また、シャワーの恐怖感もない事でしょう。
- グルーミング(抜け毛処理と毛球処理)
すぐには濡らさずに、しばらくブラッシングをして抜け毛やもつれ毛を取りましょう。まず、グルーミング・ラバーブラシで皮膚表面をしっかりブラッシングしましょう。但し、決してワイヤーブラシ(スリッカーブラッシング)でこするのではありません。あくまでゴムブラシです。長い突起の出ているブラシが良いのです。抜け毛をしっかり取る前処理が重要です。毛球があったらスリッカーブラシと金グシでときほぐしておきましょう。 - 抜け毛ともつれ毛処理
軽くスリッカーブラシで浮き上がった抜け毛をしっかり体から抜き取りましょう。但し、軽くブラッシングをしてください。そのスリッカーブラシについている抜け毛を取るために、両目ブラシで毛をスリッカーからはずしてきれいにしておくことも忘れないでください。毛球がある場合には、ハサミで切り落とすか、スリッカーまたは両目ブラシで毛をときほぐしてください。 - かけ湯シャワー
さあシャワーです。まず全体を濡らしましょう。お湯の温度は冬場で34℃ぐらい、夏場はエアコンがよくきいていて、室温を低くコントロールできている所では32~33℃ぐらいでも良いのですが、室温を低くできていない所では、最高でも30℃以下の温度のシャワーまたはぬるま湯を使いましょう。 - シャンプー
シャンプー剤をふりかけてください。(薄めて使用するタイプと、直接使用するタイプがあります。そのシャンプーの使用指示に従ってください。)まず背中の高い部分からシャンプーをするのが一般的です。手で泡立てるのが普通ですが、汚れが強い場合には目の細かいシャンプーラバーブラシ(写真参照)を使用して洗います。ゴシゴシと毛根部までしっかり洗い落としてください。 - 上から順に
上から下へ、肩から前胸へ、そして前足へ。続いて足先まで洗いましょう。 - 前から後ろへ
胸腹をサイド側から下側まで、しっかり泡立ててください。 - 顔は最後に
腰から尾、そして臀部から大腿部そして内ももへ、上から下へ、後ろ足の裏までしっかり泡立ててください。そして次には頭・顔・アゴに移ります。目の周囲、シワの間、鼻先などはガーゼにシャンプー剤をつけて洗ってください。 - シャンプー後しばらく置く
そのまま(シャンプー剤を泡立てたまま)5~10分間ぐらい、そのままにしておきます。 - シャンプーラバーブラシ
再び細目のラバーブラシでグルーミングしてください。 - 洗い落としシャワー
さて、シャンプー剤の洗い落としのシャワーです。もちろん超ぬるま湯です。ゆっくりとタッピングしながら、シャンプー剤をしっかりと洗い流してください。 - 湿っている間に保湿剤
しっかり流し終わったら、手で余分な水分を水切りしましょう。もし必要ならこの時点で保湿剤をスプレーしてください。そしてしっかり全身にのばしましょう。 - タオル乾燥
速やかに乾いたタオルで水分を拭き取ってください。 - 低温ドライヤー乾燥にもグルーミングラバーブラシ
ドライヤー(低温)で乾燥させてください。その時グルーミングラバーブラシ(長い突起のラバーブラシ)で毛をかき分けながらドライヤーを使うと早く乾燥させられます。 - 生乾きでスリッカーブラシで毛立て
ほぼ生乾きになった頃に、長毛種の犬はスリッカーブラシで毛を1本1本ほぐしながら、ドライヤーをかけてください。 - 最後にもつれ毛の確認
毛がダンゴ状になっている所には、両目グシで毛をときほぐしてください。しっかり乾くまでドライヤーを使うことを忘れないでください。 - 終わったらお水と散歩
終わった後には必ず、おやつと水を与えます。そしてすぐにお散歩に行きましょう。ほとんどの犬は15分以内にオシッコをします。おやつとお散歩がキーポイントです。
これであなたも犬のお風呂入れの達人です。 - ノミダニ予防を忘れずに
月に一度はノミダニ駆除のフロントラインプラスをつけてくださいね。
お風呂グッズ、何がいるの? Q10726
お答えします。
- ラバーブラシ(2種類):荒目と細目
荒目はグルーミングラバーブラシです。グルーミングブラシとして毛を抜くためにお使いください。細目はシャンプーブラシとして、しっかり洗うために使います。スリッカーなどの金属物は肌を傷つけることが多いので、ドライヤーまたは毛玉を取る時以外は使用しない方が良いでしょう。湿疹がある場合は特に注意して使用してください。 - スリッカーブラシ(ソフトスリッカー)とクシ
弾力のあるブラシを使用しましょう。毛を1本1本バラすためと、毛についた汚れを取るため、そして抜け毛を取るために使います。 - シャンプー剤
当然必要なものです。肌の状況に合わせて選びましょう。薄めて使うタイプか直接使うタイプかを、よく確認して使用してください。もちろん犬用のシャンプーですよ。当院では特別シャンプー11種類で対応しています。 - 保湿剤
シャンプー回数を多くしていく場合や、乾燥肌、そして痒みのある肌に使用します。 - タオルとドライヤー
もちろん濡れた体を乾燥させるために使用します。
それではガンバッテ犬の皮膚の健康を保ちましょう。ヨッシャ、これでOKです。