このコーナーは長編のため前編と後編に分けて体重(減量)コントロールの重要性が書かれています。前のコーナー減量大作戦の前編 実施前の解説編で減量がなぜ必要か?減量実施による10のメリット、減量前の心構え、などを良く理解して、家族全員の協力を得て次のステップ減量大作戦の後編 実施技術編に読み進めてください。
減量大作戦の後編は実施技術編として次の2編から成り立っています。
- 体型的肥満度評価(BCS%)の方法と減量目標体重の設定
- 減量のために必要なカロリー計算とヒルズr/dの給与量の算出方法の実際
実質的に計算が重要ですから卓上計算機をご用意ください。あなたのニャンワンのために自宅で算出できるように計算方法が例題に沿って詳しく解説されています。デジタルヘルスメーター(体重計)と計算機の準備をして読み進めてください。尚、読む前と後に必ず「かた先生ありがとう!」と言うのをお忘れなく。
この減量プログラムは管理されて行きます。当院での実施例は何度も実行され計画通りにうまく進んでゆきます。
もしうまく行かない場合には第一に給与量を決める計量カップと実給与グラム数を調整確認してください。毎回はかりで実測定するのが一番。時々計量カップでの重量確認が二番。今フードを給与した後すぐに次の給与のためのフード計量をセットしておくのが三番です。
第二にあなたの家に裏切り者がいないか確認してください。そのいずれの場合でもうまく行かない場合の次の一手は次の機会にお話いたします。
まずはこのホームページを読んでやってみることです。あなたならきっと出来ますよ。
背後霊ではありませんが「かた先生」が後ろに付いています。「イエス アイキャン」、「かた21」、「サンキュウニャンワン」です。うまくいったら、「かた先生、ありがとう」と言うのをお忘れなく。
それでは、「ニャンワンとご一緒にいい日々」を「贅沢は素敵、肥満は敵」。
体型的肥満度評価(BCS%)の方法と減量目標体重の設定 Q30604-2_001
まず現在の体型から肥満度の評価を相対的に表現(以下、BCSという)します。それは骨格に対する肉付きと脂肪の付き具合(%)で表現します。私は身長178cmで体重は77kgです。標準体重で肥満ではありません。もし私の身長が155cmで体重が同じ77kgだとしたらたぶん腹も出ていて健康診断を受けに病院に行けば肥満と言われるでしょう。つまりニャンワンの場合でも日々の診察のときに体重測定すると時々「太りすぎですか?」と聞かれます。
実際には体重が問題では無く、体格(骨格)と肉付き、脂肪付きが問題なのです。それで現在の体型からどのくらいの体重にまで減量をしたらよいのか?を計算し現在と減量完了後の状況差を表現する方法BCS%評価法を使用します。
その子の好ましい体型(理想体重)を100%とし、それぞれの肥満の状況を相対的に115%、120%、125%、130%、140%・・・・と言うふうに%を用いて表現していくのです。慣れると簡単ですが一度かかりつけの先生に評価して頂ければより良いでしょう。
そのことから修正設定される理想体重は、自分のニャンワンが基本的に「何㎏にまで減量させるのか?」と言う減量のための「目標体重を設定する」事になるのです。
自分でBCS評価を出したい方のために大きな目安となる理想体重を設定しそれを基準として115%程度過肥、130%以上の肥満と表現できるように下記の三ヶ所を測定しその感覚度合いで評価判定します。
BCSの評価ポイントは、①肋骨・②ウエスト・③丸形体型の三ヶ所の相対的評価で判断していきます。
BCS判別評価基準 Q30604-2_002
- 肋骨の評価
- 理想体重
- 指でさわった感触で皮膚の下に少しの脂肪を感じるがシッカリと肋骨のデコボコが感じ取られる。決して痩せているようには見えない。
- 115%過肥
- 指でさわった感触で理想体重に比べセーターを一枚着た感じ。肋骨をさわれるがデコボコ感はかなり弱い。少々モチャッとした感じ。
- 130%肥満
- 指でさわった感触で理想体重に比べセーターを二枚着た感じ。肋骨のデコボコを感じにくいボチャリとした感じ。
- ウエストの評価
- 理想体重
- 指で触った感触で背中の背骨の中央部のデッパリが肩から腰にかけてごつごつ当たる。背中の背骨の中央が一番高く肋骨の横までのシェイプが放物線を描く。腰の位置でも同様のシェイプを描いている。腰を真上から見てなんといってもウエストがシッカリとマリリン・モンローのようにくびれている。犬でも猫でも人でもウエストのくびれは理想的体重(グラマティックボディ)には必要です。
- 115%過肥
- 指で触った感触で背中の背骨の中央部のデッパリが肩から腰にかけてセーターを一枚着た感じで骨をかろうじて触れる。背中の背骨の中央部が一番高く、肋骨の中央部まで円を描くように丸みがある。腰を真上から見るとウエストのくびれは少しあるがほぼない状態で尻に至る。
- 130%肥満
- 指で触った感触で背中の背骨の中央部のデッパリが肩から腰にかけてセーターを二枚着た感じで骨を触れない。背中の背骨の中央部が周りの盛り上がりに負けていて肩から腰にかけて線上に溝ができている。腰を真上から見るとふっくらとしていてくびれは無くむしろ張り出している感じ。
- 丸形体型の評価
- 理想体重
- 真横から見ても上から見てもウエスト部分でくびれてウエストに締まり感があります。 胸の最下位の位置(前足付け根の後方)よりもウエストの最下位の(後ろ足の付け根の前)位置の方が高い位置に来ています。その動物の体型的特長がハッキリと見えます。 両肩や両腰の骨のデッパリが感じられる。飼い主さんが「うちの子は少し痩せているのでは?」と思うぐらいがたぶんその子の理想体重です。
- 115%過肥
- 真横から見ても上から見てもウエスト部分でのくびれはほとんど無く横幅もやや広がりを感じる。背中の稜線の高さも腰の背面でやや高い感じがある。全体的に丸みを感じる。
- 130%肥満
- 真横から見るとお腹の張り出しがあり、たるみも認められる。背中や胴回りにも横に張り出しがあり腰の稜線で盛り上がりがハッキリしてくる。全体的に大きい感じがし丸みと重量感から暑苦しさが感じられる。
減量のために必要なカロリー計算とヒルズr/dの給与量の算出方法の実際 Q30604-2_003
さてここからは算数です。電卓とA4ぺーパーと鉛筆をご用意ください。あ、消しゴムも!
ラブちゃん(50kg)、チョコちゃん(9.6kg)それぞれのケースで計算して表現します。
- 現在体重とBCS評価での減量後の目標体重の算出
- 減量のために必要なカロリーと目標体重で一日に必要な維持カロリー
- 減量のために与えられる食事(ヒルズr/d)1日分給与量と一回分量
- 標体重に至るまでに必要な減量日数(目安)と一日当たりの体重減少量
かた先生の減量大作戦の実際マル秘公開
- 現在体重とBCS評価での減量後の目標体重の算出
漠然とした減量ではなくシッカリとした目標を定めましょう。(かた先生はエエ加減な事が嫌いです!)BCS評価とは目標体重の設定です。- ラブちゃん(50kg;145%肥満)はまず130%肥満としてスタートです。実際は145%ですが一回での減量幅としては大きすぎる(注1)ので、まず30%の減量を行い38.5kgまで体重を落とします。ここで一旦この体重での二ヶ月間ぐらい維持して(注2)体調の確認をします。その後第二段階の減量プログラムを実施して再度15%減量33.5kgまで下げます。
- 第一段階の減量目標体重
- 50kg÷1.3=38.5kg
- 第二段階の減量目標体重
- 38.5kg÷1.15=33.5kg
- チョコちゃん(9.6kg;135%肥満)も二段階減量法を取りますが第一段階で20%の減量で8kgへそして第二段階で15%の減量で6.9kgまで減量します。
- 第一段階の減量目標体重
- 9.6kg÷1.2=8kg
- 第二段階の減量目標体重
- 8kg÷1.15=6.9kg
(7kgを切る)
(注1)30%以上の減量は一度で進めてはいけない。30%以上減量する必要がある場合には二段階の減量方法を取ります。
(注2)目標体重到達後の体重維持のためのフードはヒルズw/dを使います。100g当たり292kcalです。尚、減量のために使用するフードヒルズr/dは100g当たり296kcalです。ここでは体重減量と体重維持とでは使用するフードは違う事に注目。 - ラブちゃん(50kg;145%肥満)はまず130%肥満としてスタートです。実際は145%ですが一回での減量幅としては大きすぎる(注1)ので、まず30%の減量を行い38.5kgまで体重を落とします。ここで一旦この体重での二ヶ月間ぐらい維持して(注2)体調の確認をします。その後第二段階の減量プログラムを実施して再度15%減量33.5kgまで下げます。
- 減量のために必要なカロリーと目標体重で一日に必要な維持カロリー(基本的には算出方法は同じですので、ここでは第一段階のみを計算します。)
- ラブちゃんが38.5kgになるためと、38.5kgになった時に必要なカロリー
- 減量のために必要な(給与)カロリー
- 38.5kg=1,225kcal
与えるヒルズr/dの一日の給与量を決定するために必要なカロリー - 目標体重で一日に必要な体重維持カロリー
- (注3)38.5kg=1,960kcal
その体重を維持する時に給与されるヒルズw/dの量を決定するカロリー計算
- チョコちゃんが8kgになるためと、8kgになった時に必要なカロリー
- 減量のために必要な(給与)カロリー
- 8㎏=310kcal
- 目標体重で一日に必要体重維持カロリー
- 8kg=496kg
(注3)同じ体重でのカロリー計算でも減量実行時のフード給与カロリーと減量目標体重への到達後の体重維持カロリーには大きな違いがあります。その差が皮下脂肪・内臓脂肪の燃焼カロリーです。
- ラブちゃんが38.5kgになるためと、38.5kgになった時に必要なカロリー
- 減量のための一日の食事(ヒルズr/d)の給与量の計算
次に具体的なフードの給与量を「減量のために必要なカロリー」から計算します。- ラブちゃんへの一日あたりのヒルズr/d給与量
- ヒルズr/d296kcal/100g使用
- 1,225kcal÷296kcal×100g=413g/日
これを1日3回給餌の場合は3分の1量(413g÷3回=137g)を3回与える。仕事などの都合で1日2回の食事の場合は413g÷2回=206gを2回与える。
- チョコちゃんへの一日あたりのヒルズr/d給与量
- ヒルズr/d 296kcal/100g使用
- 310kcal÷296kcal×100g=104g/日
これを1日3回の場合は一回量3分の1量(104g÷3回=34g)を与える。1日2回の食事の場合は104g÷2回=52gを与える。
先に話したようにエサを与える回数は1日2回よりも3回給餌の方が良い。とにかく犬は腹が減ってくるので食事の回数が多いほど満足感が高くなる。朝・昼・晩と1日3回与えられないときには1日2回にまたは朝出掛け・仕事から帰ってすぐ・寝る前と言う変則3回給与でも良いことにしておきます。
- ラブちゃんへの一日あたりのヒルズr/d給与量
- 目標体重に至るまでに必要な減量日数(目安)と一日当たりの体重減少量
さて飼い主さんが一番今知りたい事です。- いつ頃その体重になるのか?
- 途中で確認しながら減量をやって行きたいな~?
その希望をかなえます。
- ラブちゃん11.5kgの減量
- 減量で消費される蓄積脂肪のカロリー
- 50kg-38.5kg=11.5kgの蓄積脂肪カロリー
88,855kcal - 一日に減量消費されるカロリー量
- 維持のカロリー-減量食カロリー
1,960kcal-1,225kcal=735kcal - 目標体重に至るまでに必要な減量日数
- 蓄積カロリー÷減量消費カロリー
88,855kcal÷735kcal=121日間(約18週間) - 一日当たりの減量(減少)体重
- 期間減量÷日数
11、5kg×1,000÷121日=95g/日
2週間では1.33kgの減量のため体重を2週間ごとに測定し確認する。
- チョコちゃんの減量
- 減量で消費される蓄積脂肪のカロリー
- 9.6kg-8kg=1.6kの蓄積脂肪カロリー
12,320kcal - 一日に減量消費されるカロリー量
- 維持のカロリー-減量食カロリー
496kcal-310kcal=186kcal - 目標体重に至るまでに必要な減量日数
- 蓄積カロリー÷減量消費カロリー
12,320kcal÷186kcal=66日間(約10週間) - 一日当たりの減量(減少)体重
- 期間減量÷日数
1.6kg×1,000÷66日=24.24g/日
2週間では339gの減量のため体重を2週間ごとに測定し確認する。
かた先生の減量大作戦参考写真 Q30604-2_004
ラブラドールの減量大作戦前後とダックスの減量大作戦前
ラブラドール
ダックス