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かた21動物病院

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質問箱

猫の慢性便秘症(巨大結腸症)と言われました。手術を受けなければいけないの?お薬では治せないのでしょうか?教えて、かた先生。 Q331013

うちのネコ(7才)が、私に似たのか便秘がちなのです。以前から2~3日に1度ぐらいの排便でしたが、最近では3~4日に一度ぐらいしか便が出なくなりました。時には4日間以上ウンコが出ていないこともあります。トイレには何度も行っているのですが排便のあとがありません。最近では食欲もなくなってきたので病院に行ったら、慢性便秘症と言われました。また「猫の慢性便秘症の場合は状況改善するには手術しかない。時にはそのまま死亡することもある。」と聞きました。
手術を受けないとダメでしょうか?お薬で内科的に治せないのでしょうか?手術はいやなので・・・。自宅でできる対策などありましたら教えてください。娘が小学5年生の時に拾ってきた子なのです。その娘も今高校生のデリケートなときです。先生にとっては直接通院できない距離ですが、つまらない話と言わずに教えてください、かた先生。

佐賀市N.N

ハイハイ!チョコットだけ教えてあげます。
確かに、私の病院まで通院して頂くにはチョコット遠い距離ですが、このご相談はあなたの言うようなツマラナイ話ではなくてツマッタ話ですよ。便秘の話ですから!スカッと通してあげましょう!太っていたまたは太っている猫で少し歳をとってくるとこれを発病することが多いのです。
大腸の内の盲腸の次の腸である結腸と言う部分で宿便がたまり腸のぜん動運動がそれ以降に伝わらず、便が停滞してしまい慢性の便秘になる病気です。ちょうど縁日の出店で人形を作る細長い風船を吹いて膨らませる時に、一番端っこから膨らんでくると最後の口元までまで膨らませることが出来るが、初めに途中から膨らみ始めるとそれ以降が膨らまずに先に口元の方向で膨らんでくる現象に似ています。
便秘という状況は人でも犬猫でも同じように起こるものです。あなたのネコちゃんのように慢性化していて来院するケースはけっこうあります。またそれは犬よりネコの方が多いのです。

次の4点でお話しします。

  • 慢性便秘症は犬より猫のほうが多いのはなぜ?
    ネコの慢性便秘症が犬より多い理由
  • 慢性便秘症の症状は?
  • 便の軟化剤と緩下剤はどう違うの?
  • 対処実施時のイメージ

じゃ~、あなたのネコちゃんによろしく。ツマラン話といわないで下さい(便秘の話ですので)!

慢性便秘症は犬より猫のほうが多いのはなぜ Q331013_001

ネコの慢性便秘症が犬より多い理由
  • ネコは犬より肥満になりやすい。
    もともと飼い猫の若いときには夜中などに活発にドタバタ暴れまくっていた子が、2歳半ぐらいになると急に行動パターンが変わりどっしりと落ち着いてきたように見える食っちゃ寝る猫になってしまいます。また猫の飼い主様が家に帰って来たときノソ~と出てきてホホズリをして出迎えることがあっても、犬のようにオッポをふり振りしてで迎えることがない(犬のシッポふりは便秘体操?)。しかし猫のシッポふりはシッポの先だけでお腹の部分をあまり揺り動かさない。またネコの飼い主さんは犬の飼い主さんよりその猫のフードに別のものをトッピングしているケースが多いし過食になりやすい。おまけにネコのフードはもともと嗜好性をあげるために一般的に犬のフードよりもカロリーが高く設計されている。一般的にメンテナンス(1歳から7歳用)で100g当たりネコ400Kcal以上/犬370Kcal以上である。つまり便秘の話だからメタボになりやすい。
  • 猫用フードの粗繊維含有量は犬フードより少ない。
    また猫も犬も動物の分類学上共に肉食獣ですが、猫は犬より生理学的により肉食獣傾向か強いまま人と共に暮らすようになってしまった動物です。それゆえこれらの動物を飼育管理するためには栄養学上猫と犬のフード設計には明確な差があるのです。とりわけ必要なタンパク質含有量でその違いははっきりと現れています。猫のタンパク質要求量は犬のそれより1.5倍も多く必要です。具体的に言うと成犬用フードの粗タンパク質含有量は22%以上で設計されるのに比べ、成猫用フードの粗タンパク質含有量の設計値は33%以上が一般的です。 と言うことはフードの製造上猫のフードは犬のフードに比べ栄養密度が濃く(高蛋白・高カロリー)、そのため原料コストが高くなってしまいます。フードの栄養密度が濃くなることに伴って逆に腸の蠕動運動を刺激し便通を整えるために必要な「粗繊維物質」の含有量が少なくなってしまうのです。 具体的には犬用フードの粗繊維含有量は4~5%以下なのに対して猫用フードのそれは2~3%以下が一般的です。この1~2%の粗繊維含有量の差が実は腸のぜん運動を刺激するためには大きな違いとなるのです。
  • ネコは犬より水分の摂取量が少ない。
    このことは以前にネコの血尿・膀胱炎・膀胱結石・下部尿路疾患・オシッコが出ないバックナンバーQ33101を参照してください。)でお話しました。もともとネコは砂漠のような乾燥地帯で生活できるように飲み水の量が少なくても生きていける水エコ型動物です。そのことは逆に便を硬くしてしまう要因でもあります。
  • ネコはトイレ環境がきれいでないと排泄を拒むきれい好き。
    ネコは本来的に単独であっちこっちうろつき気分のよい所でウンコ・オシッコをしてきた動物です。トイレの場所を選ぶ動物です。トイレのしつけという面からするとしつけが簡単にできると言う利点がありますが、逆にそのトイレが汚れていると排泄を拒む性質をも持っています。部屋飼いになっているネコは、特にトイレの汚れに嫌悪感を持っていてウンコやオシッコをガマンしてしまいます。ウンコをガマンするのは気分の良いものではありません。人でも犬でも猫でも同じように体に悪いことです。便秘を慢性化させてしまいます。
  • ネコは性格的に体をなめる・毛ずくろいをする回数が犬より多い。
    ネコは自分がそこに居ることを外敵に悟られないために自分の気配(ニオイ)を隠す目的で自分の体をナメます。いわゆる「ネコのグルーミング行為」です。当然の結果として「毛を飲み込んでしまう」事になります。それが胃壁や腸壁に引っかかってまたどんどん絡み合って「毛玉(毛球症)」となり腸管に残り「便の通過障害物」となります。慢性便秘の原因を作ることにもなります。この件は後日の「ネコの毛玉を上手に吐かせる方法」で詳しく解説いたします。 つまり(便秘の話だから)猫には犬以上に便秘症が多いのです。しかもそれが慢性化している「慢性の便秘猫」がけっこう認められると言うことなのです。

慢性便秘症の症状は? Q331013_002

一般的に猫も1日1回以上は排便をするものですが便秘のために「便が太く硬くなり」排便時に痛みが伴うのか長い時間トイレで排便姿勢を取っている猫や、何度もトイレに行く猫もいます。そのような症状が続くような状況を猫の慢性便秘症と表現されますが、獣医さん的にはネコ巨大結腸症といいます。

もちろん軽度な症状から重度な症状までいろいろなパターンがありますが、共通しているところはトイレに時々行くのに排便した形跡が見当たらないことです。慢性化してくると時々便が硬いために粘血便が見られます。それを見た飼主さんが「下痢をした。出血を伴った粘液性の下痢だ。」と言って来院された方もいらっしゃいました。お腹を触ってみると下痢どころか硬い宿便が確認されて下痢ではなくこの子は慢性の便秘だ。と言う全く逆の診断名になることも少なくありません。もちろんあなたの猫ちゃんのように排便が困難である状況が長く続くと当然のこととして食欲不振や嘔吐を発することになります。またお腹をさわられるのをいやがったりもします。

体重が書かれていませんので違っているかもしれませんが、けっこう太ッチョさんまたは過去に少なくともお腹が膨れて見える肥満の時期があったんじゃないですか?私の所にこの状況で来られる6才(中年)以上の猫ちゃんではたいがい太ッチョさんです。ちなみに短毛種の雄にこの症状が多く認められています。もちろん長毛の猫にも慢性便秘は起こりえますが。

診察された先生は巨大結腸症(きょだいけっちょうしょう)とおっしゃってなかったですか?大腸の一部の結腸が細長いゴム風船を中途で膨らませたような状況になって腸本来の蠕動運動(ぜんどううんどう)で便を後方に押し出すことができなくなってしまっているのです。結腸の後半分はもともと排便する時まで糞を貯めておく貯蔵庫の役目をしている所です。その貯蔵庫に糞を貯め込みすぎて腸が動かなくなったと思っていただければ良いと思います。もうちょっと詳しく言うと腸を形成している筋肉(平滑筋)が機能不全になったのです。ですからこの病気には私どもは次の三段階で対処しています。

第一段階(軽症)
浣腸と食餌療法のみ。フードはヘアボール・コントロールタイプや、高繊維食w/dなど腸を適度に刺激することで排便をうながすタイプのものです。
第二段階(中症)
浣腸・食餌療法と緩下剤。時に糞軟化剤を併用します。またフードは逆にl/dのように高消化率のフードで糞量を少なくする物を与えたほうが良い場合もありますが一般的には第一段階に使用するフードと同じく、高繊維食w/dを使用します。。
第三段階(重症)
手術です。機能不全になった腸を部分的に切り取ります。
そこまで行く前に、対処しましょう

多くの場合は第二段階まででうまくコントロールできていますよ。以下に具体的なお薬の使用方法を記載してあります。実際にあなたの猫ちゃんの主治医が出されたお薬処方によって使用方法が違いますが、私が処方する方法ではフード変更と二種類のお薬を使用します。その対処方法でお話しておきます。対処法ではフードの変更とお薬の便の軟化剤と緩下剤を使用します。

便の軟化剤と緩下剤はどう違うの? Q331013_003

便の軟化剤を使用しますとドッペリとしたボリュム感の在る便が出ます。また緩下剤を使うとべチャーっとした便になります。それら2薬を指示に従い組み合わせて便の排出をコントロールしてゆきます。便の軟化剤や緩下剤の投与は難しいものではありません。またまれに浣腸をすることもありますがそれほど大変なことではありません。チョット勇気を出せばすぐ上手になります。ホームドクターの所でお薬とフードをもらって自宅で療養できますよ。

お手紙の内容から判断して第二段階でしょう。手術まではいかなくてすむと思われます。あなたの努力で!!
ここで、いつもの合言葉です。イエス アイキャン! 電話はサンキュウ ニャンワン(3921)かた21動物病院!(ナンデ!)

対処実施時のイメージ Q331013_004

まず、フードの変更をしてください。
繊維分の多いフードを与え腸のぜん動を刺激する必要があります。初期にはヒルズのw/dと言うフードを使います。治療薬として便の軟化剤と緩下剤の2種類を、状況に合わせて使用します。
手術の好きな先生はすぐに拡張した部分の腸を切断する方法を取ります。10万円チョットぐらいかかります。東京ではその1.5倍~2倍の手術代がかかると聞いています。だから私が言う内科療法でコントロールしましょう。
使用時の若干の補足説明
便の軟化剤、緩下剤ともフードにかけて使用できます。便の軟化剤は最低3日間は連続して同じ量を与えてください。毎日便が出ておれば少しづつ減量をします。最初は1日2回、徐々に1日1回、そして2日に1回、と言うふうに減らしていきます。2つの薬で調整していくのです。緩下剤も1日2回、3日間連続でスタートしてください。緩下剤を使用するときは必ず便の軟化剤も使用します。同じ用量で2日間状況が安定して排便があれば適時減量していきます。便が出にくいときに弾みつけにまた使用します。コントロールレベルと判断できればそのレベルを維持します。4ヶ月~半年間ぐらい毎日の排便か2日に1回かぐらいで維持で切ればいいのです。基本的には順次減少させていくプログラムです。中にはお薬を一時中断できた方も数多くいらっしゃいます。まあ~、治療対策はコンナンです。でもあなたにもできると思いますよ。もう一度あなたのネコちゃんのホームドクターにゆっくり相談してみた下さい。キット良い方法を教えてくれます。