犬猫の痴ほう、認知症、ボケ、老いの問題(その3)
うちの子7歳になります。ふと気付いたのですが、最近しっかり口の周りの黒い毛の部分が、すっかり白くなっています。よくよく見るとヤッパリなんとなくというか、全体的に以前の若い頃の様な精悍さが欠けてきている様です。 大人になって、落ち着いてきたを、はるかに通り過ぎている様な気がします。
犬が歳をとるって、老いるって、どんな変化ですか?そしてその時何を、どうしてあげれば良いのか教えてください。
糸島市 福の家族のもの
はい、良い質問です。老いの病の峠という坂のお話ですね。
病院に来るペットの3割は、8歳以上のシニア世代です
質問箱バックナンバー306011”犬や猫の年齢は人年齢で言ったら何歳?”を参照してください。
老いるは価格変動のあるオイルではなく、人を含めた地上を徘徊する全ての動物達に分け隔てなく平等に神様が与えてくださった権利老いるです。痴ほうと認知症、徘徊と介護は別に記載されています。そこを参照してください。
私が言いたかったのは、加齢、老いる事による、好ましくない問題は認知症、ボケると言う問題だけではない。 加齢、老化に伴い、若い頃には無かったような身体的機能の衰えから来る不調や病気が出てくるという事実があります。
私の両親はすでに亡くなっています。お陰様でお二方とも認知症は軽度で、最後までそれほど手かからずで、私もお迎えが来るまで「こうありたいものだ」と言う見本を示していただきました。最後まで子ども孝行をしていただき本当にありがたいことです。しかし、私の両親のように、認知症が比較的軽度であったとしても、確実に身体機能は衰え、そして死に至その時が来ます。
皆様方はそのことを受け止め、あなたのペットの加齢に伴うそれぞれの時点での症状としての行動的変化からその事を気付いてあげれば、その不具合の早期発見につながり、あなたとペットとの幸せな時間をより長く過ごせると信じます。
加齢・老いを判断するのは飼い主さんです。
- 以前のように遊ばなくなった。
- 活発さが無くなった。
- 動きが鈍くなった。
- 寝ている時間が多くなった。
これらの一般的変化は、飼い主さんしか気付かない加齢に伴う症状です。しかし、これらのことも「どこか具合が悪い所があるのでは?」と先ず考えてやってくださること。そういう目で観察することが重要です。
加齢に伴う一般現象を見てみましょう。
白髪が増えているのに気付く。 Q30703_001
典型的な変化です。3歳ぐらいからぼちぼち口の周りに生えているのが目立ってきます。5歳ぐらいにははっきりとした変化が、一面に広がっていることに気付きます。8歳以上(人年齢48歳)以上のシニア世代頃になると、ホルモン分泌を含め新陳代謝が悪くなり、毛づやももう一つと言う感じで抜け毛が増えてきます。それに伴い皮膚の脂の分泌が多くなり、以前より犬臭くなります。また、毛づくろいをしなくなるからでもあります。この現象は臭覚の衰えに関係していると私は考えております。毛づくろいをしなくなった分だけ飼い主のあなたが毛、皮膚の手入れをしてあげる必要が在ります。
猫の場合には、逆に乾燥タイプで白いフケがでる、毛が粗ぞうと言う状況になることが多いです。
対策
- ラバーブラシを使って毛並にそってブラッシングをする。抜ける毛をしっかりはずす為のブラッシングをする。皮膚の血行を良くするマッサージをしてあげる。
- シャンプー回数を増やしてあげましょう。
- 直射日光をしっかり目から入れてあげ、時間や気温・季節の変化を体に当ててあげる為に、お散歩を奨励しています。
- 冬などの寒い時期には、出発前に外に出たところで、全体の皮膚を前後、上下にしばらく揺さぶり、皮膚の温度をあげてやります。うまく出来ると犬は自分で体をブルブルと揺さぶり、「ヨッシャ行こうか」と合図します。
- 栄養状況に注意も必要です。
爪が太く、硬くなるのに気付く。 Q30703_002
爪も皮膚の一部です。人の場合でもそうですが、太く、硬く、早く伸びます。爪が伸びているのを気付かず、巻き込んで、肉球に刺さって、出血して、痛くて、ビッコを引いて、初めて気付いて病院に来た。と言うケースがよくあります。
対策
- 時々足元、爪、歩行状況を注意して観察する。
- 3ヶ月に一回ぐらいは爪切りに行く。
- 特に親指に注意。
視力低下や目の病気が増えてくる。 Q30703_003
人と同じように、犬も猫も加齢に伴っての視力低下はあります。9歳を越えると全ての犬猫で視力の低下があるとされています。まず目のレンズ(水晶体)が曇ってきたり、色がついてくる現象があります。5~6歳ぐらいに良くある水晶体が青白く見える現象は、核硬化症と言って白内障とは別に扱われます。白内障は10歳前後ぐらいからちょくちょく見受けられるようになります。そのまま放って置くと失明するのですが、時にはブドウ膜炎、そして緑内障へと発展することがありますので注意してやってください。
角膜炎は加齢とともに涙の分泌量減ってくるので、目ヤニが多くなってきたら病院に行って時々確認をしたもらいましょう。角膜、結膜、マブタなどの目の表面に異常が起こっています。これらのケースは目に痛みがあります。また目が見えにくくなりますので注意が必要です。治療が可能です。
対策
- 月に一度は、しっかり目を見つめてやってください。
- 核硬化症は視力障害にはならないので心配要りません。
- 白内障も初期の段階では、進行を遅らせることが出来ます。
- 角膜・結膜・マブタの病気は、かなりうまく治療ができます。
- 痛みのある病気は、明日ではなく今日病院に連れて行って下さい。
- これから目薬をさすことが多くなるので早く勉強してください。
臭覚、聴覚の低下 Q30703_004
先の視力低下と同じように、9歳を越えると全ての犬猫で匂いをかぎ分ける力や音を聞き分ける力の低下が起こります。これらの力は犬猫は人の何倍何百倍もの能力を持っているのですが、加齢と共に低下してきます。しかし、耳が聞こえにくくなったからといって大声を立てるのは止めましょう。叱られていると思って嫌がられますよ。
多くの場合は老いをこの「匂いや、耳が聞こえているのかな」と言う疑問から、犬猫の行動的変化に気付き「うちの子も、歳をとったのかな」と相談に来られる方が多いのです。
対策
- 在りません。 受け入れることです。ただし、早い時期には進行を遅らせるお薬はあります。
- 進んできたワンちゃんを散歩に連れて行く時には、必ず首輪リードを着けしっかり掴で散歩においてください。飛び出しを防止する為です。長く伸びるリードフレキシブルリードは事故の元です。危険!!
口を痒がったり、口臭がひどくなる。口の外や唇の口唇炎と口の中の口内炎や歯周病 Q30703_005
口唇炎は手で口を引っかいたり床にこすりつけたりします。口の外側の皮膚の病気、傷によるものもあるが、一般的にはアレルギー反応が原因であることが多い。手で口を引っかいたり、口を床にこすり付けたりする。上下の唇が赤くなって腫れている事で気付く。
口内炎や歯周病は、口の中の歯茎や粘膜が赤く腫れている。歯石や虫歯があったりする。口臭が強い、よだれを垂らしている事も在る。猫ではいくつかのビールス病が疑われる。
対策
便秘とオナラと下痢 Q30703_006
高齢犬は腸の筋肉量が低下して、その腸の運動量が弱まります。それに伴い便秘やオナラが増えます。また逆に下痢を発生させる事も多くなってきます。猫では1週間も10日間も便が出なくなることがあり巨大結腸症に注意が必要です。
質問箱バックナンバー331013”「猫の慢性便秘症(巨大結腸症)」と言われました。手術を受けなければいけないの?お薬では治せないのでしょうか?教えて、かた先生。”を参照。
**近日中(6月頃予定)に「続・良いウンコ・悪いウンコ、便秘便、軟便、下痢便どの辺で区別するの(うんこスコアー付き)」を掲載するので勉強しておいてください。
対策
- 毎日の食事量、毎日の排便量、便の状況を見る。
- 適切なフードに変えてやる。水をしっかり飲ませる努力をする。猫に水をより多く飲ませる方法は質問箱バックナンバー”33101「猫の血尿・膀胱炎・膀胱結石・下部尿路疾患(FLUTD)・オシッコが出ない」どうしたらいいの?「水分エコが原因・猫に水をより多く飲ませる方法」教えてください。”を参照。
- 動物病院から、便秘のお薬を常備薬としていただいておく。
おしっこもらし、失禁 Q30703_007
寝ている時など無意識の状態でオシッコをもらす事を尿失禁といいます。高齢犬のメス犬でよく見られますが、オス犬でも見受けられます。特に避妊手術を受けたボーダコリーやドウベルマンのメスに多いといわれています。確かに私もボウダーコリーのメスの数頭を治療したことがあります。もちろん猫ちゃんにも尿失禁はありますが、犬よりは少ない気がしています。しかし、高齢の猫は、トイレ以外の場所でするケースが増えてきます。
対策
- 治療できるケースが少なくないので、動物病院に相談してください。
- 避妊手術は卵巣を取る手術を受けた犬のほうが卵巣・子宮を取る手術を受けた犬より、このメス老犬の尿失禁発生率は少ないと言っている研究者もいます。
質問箱バックナンバー30104”「尿失禁」なかなか止まらないのです。~これがメス犬・避妊手術の欠点です~”を参照。
シニア世代で注意すべき病気 Q30703_008
心臓病
大型犬では5歳・中型小型犬では7歳ぐらいから、心臓病が増えてきます。なんとなく元気が無い。呼吸が乱れる。散歩の途中で走る歩くのを嫌がる。朝方興奮するとせきをする。水を飲むとせきをする。足が震える。舌の色が悪い。これらは心臓病のサインです。特に猫のこの病気は発見が遅れがちです。ご注意を。
腎臓病(慢性腎不全)
猫にも犬にも在りますが特に猫の慢性腎不全は目立ちます。7~8歳以上では要注意です。10歳齢の猫の5%、15歳齢の猫の15%がこの病気にかかっているといわれています。よく水を飲む。オシッコの回数や量が増えた。オシッコの匂いが薄い。食欲が無く痩せてきた。寝てばかりいて元気が無い。食べたらもどす。毛づやが悪くなっている。こんな症状はありませんか?これ腎臓病のサインです。
質問箱バックナンバー33301”猫の慢性腎不全と言う病気です”を参照。
関節痛・変形性関節症
これは今まで述べた老的変化と違い、犬猫に動きたい・動こうとする動作を強制的に、痛みと言うシグナルで止めさせてしまうものです。痛みを持った動物は見ていて可愛そうです。
5歳を過ぎた頃から、徐々に筋肉量が減ってきます。8歳のシニア年齢では関節内にも変化があり、もう若くは無いのサインが整うのです。関節の老化は徐々に進み変形してゆきます。そして、痛みが発生しビッコを引くようになって、初めて病院に来て変形性関節症として診断されます。この現象には肥満が確実に悪影響を与えています。肥満の改善なくして関節症の改善は出来ません。肥満を改善する為の減量すると言う行為は、飼い主であるあなたにしか出来ないのです。減量を進めていただければかなりいい対応策(治療)はあります。
質問箱バックナンバー30604”毎日のお散歩2時間、痩せません。犬猫のダイエット法、どうしたらいいの?
肥満からの脱出・減量大作戦前編 実施前の解説編、後編 実施技術編を参照。
16歳のヨーキーが亡くなりました。痛みのため12歳頃から歩くのを嫌がっていましたが、「先生の治療を受けて、お陰様で最後まで元気に死んでいきました」と、ご挨拶を受けた事も在ります。
高齢の動物で歩かないではなく、痛くて、歩けないケースが多々あります。痛みの解除をしてあげることで最後まで自分でオシッコ・ウンコしていた例はいくつもあります。
ホルモン失調症
犬では糖尿病と甲状腺機能低下症が代表的です。また、猫では甲状腺機能亢進症が代表的です。それぞれシニア世代の代表的なホルモ分泌異常によって発生する病気です。
- 糖尿病
人のそれと同じです。よく食べて太っていた子がなんだか元気なく痩せてきた。水をいっぱい飲んでオシッコをいっぱいする。ソファーにも飛び乗らなくなった。歩いていてもよろける。チョットおかしい。いやこれは十分におかしいのです。猫の糖尿病はけっこう犬のそれとは違う治療法で治めることがあります。 - 甲状腺機能低下症
けっこう在ります。元気がなく、顔も元気のない顔をしています。なんだかはっきりしません。よろける・足がもつれるようだ。食べたものを吐く。立ち上がれない。など等。しっかりおかしい。早く治療を受けないと1~2週間で死に至ります。 - 甲状腺機能亢進症
猫で糖尿病と間違われる病気で、すぐ興奮する、甘えたの子が攻撃性を持つた。階段や高い所からよろけて落ちることが多くなった。うまく着地できない。など等。これもしっかりおかしくなっています。しかし治療方法は私達が「へ~」と言う方法も開発されています。
いずれにしてもこれらホルモン失調症は早く病院に行って治療を受けてください。あなたと一緒にもう少し生きれたのに治療が遅れると、いずれも命にかかわる大事です。
その他で腫瘍、皮膚のイボです。
ま~、こんなものです。長くなりましたのでこのくらいにしておきます。
楽しく過ごした思い出と一緒に、ありがとう。
おだいじに。