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かた21動物病院

人とペットの良好な関係を願う

質問箱

[犬・猫の安楽死・尊厳死(Q&A: 30701-008)](Q&A: 30701-008) Q30701_008



[犬・猫の安楽死・尊厳死(Q&A: 30701-008)]



【Q;3071-008 「犬・猫の安楽死・尊厳死」とは?】

私の犬(マロン)も4カ月前から、寝たきりで「起立不能」になっています。 元気な時には16㎏あった体重も、10㎏を切っています。 また「床ずれ」があっちこっちに出来ていて、くさい臭いが家中に漂っています。 多少なりとも、家族内で「安楽死の話題」が出たことがありますが、まだ決断ができない状況です。 最近テレビで「難病の人が、安楽死を選択」して、スイスに行って「安楽死の処置を受けた」というドキュメンタリーが放送されていました。 そのちょっと前には、カナダで「安楽死処置を受けた方」の話が、やはり放送されていました。 私の犬も「14歳で寝た切りで、再び立つことはない」と、かかりつけの動物病院で言われました。 また、その病院では「安楽死は、受けていない」と言っていて、相談に乗ってもらえていないのが現状です。 友人から、かた先生の所で、以前に「大きな腫瘍ができていた猫の安楽死処置を、していただいた。」と伺いました。 かた先生の所で「安楽死処置」も実施しているのであれば、申し訳ないのですが、かた先生に「決断のための、背中を押していただきたく」ご相談させていただきます。 安楽死は、「苦しまない」のでしょうか? 安楽死であの子が逝くときには、そばにいてあげたいのですが、可能でしょうか? 
「安楽死」の事を、教えてください。 
北九州市、 マロン(14歳、柴系雑種)の飼い主

【A;3071-008 「犬・猫の安楽死・尊厳死」とは?】

A: 大変ですね、人の医療の世界でも「介護問題は、直ぐそこにある難題」とされています。 かかりつけの先生が「治療は、不可能」とおっしゃっているのですから、またあなたもその事をすでに受け入れているので、その件についてのコメントは、控えさせていただきます。 「犬・猫の安楽死・尊厳死の件」教えて先生質問箱、承ります。

 まず事前に、【 A,「安楽死を行う。」と B,「尊厳死を選択する。」 】 の意味(行為選択)の違いを説明致します。 A・Bの選択は、あなたが決めます。

A,「安楽死を行う。」とは、動物病院の獣医師が飼い主より依頼を受け、薬物(主に麻酔薬)の使用により、「その動物の、現状の病苦」を最小限に止めながら、「その動物の死」に能動的に関与する事。 その死を迎える場所は、病院です。

B,「尊厳死の選択。」とは、「動物の病状の末期」において、その病状への「対処療法の選択」を、飼い主と相談しながら行い「その動物の苦・痛を、できるだけ緩和」しつつ、病気と闘う気持ちを保ちながら、「来るべく死」を自然な形で「お迎えする自然死」を選択する事。 その死を迎える場所は、ご自宅です。

では、「教えて先生質問箱」始めます。 回答の順序・構成を表示いたします。
1、 「犬・猫の安楽死」とは? 「ペットロス傾向は?」聞きません。 「殺処分とは違う」のです。
2、 その日の「病院に行くまでの、手続きと準備」は?
3、 「お別れを、側で見る」ことができますか?
4、 「安楽死の処置・実行過程」を教えてください。
5、 その後の「遺体の 処理」の仕方は?
6、 印象深く、記憶に残っている「安楽死の実施ケース」、 2題。
7、 記憶に残る「尊厳死」、1題。

それでは、お答えを始めます。

1、 「犬・猫の安楽死」とは? 「ペットロス傾向は?」聞きません。 「殺処分とは違う」のです。

 ①、 「犬・猫の安楽死」: いくつかの(「全部の」では無い)動物病院で実行されている「安楽死」は、飼い主様から依頼があって「飼い主様と動物病院側」との話し合い(合意)により、実行されているもので、動物管理センター等で行われている「殺処分」とは、類似行為ですが「意味合い」が違います。
動物病院で行われる安楽死は、「人道的立場」に立って行われています。ですから、必ず予約・打ち合わせが、必要です。 そのために「今日突然来られての、安楽死は承っておりません。」
②、 「実行例は?」: 多い年で「年間9件」、少ない年でも「年間2件」はあります。 平均で「年間に4件ぐらい」です。 今年は、まだ2件だけですが。
それぞれのご家庭の事情により、いろいろな理由がありました。 それぞれに納得のいく理由でした。
「悪性の腫瘍」や長期間の「起立不能や療養」、また強度の「てんかん発作」や、回復見込みのない「重症度の病気」、そして「夜泣き・認知症」などなど。

 最近「あった」ケースは、年配の女性が「私は一人暮らしです。私は近日中に入院手術を受けます。帰ってこれないかもしれません。 この子が心配です「シーズ17歳、皮膚病と心臓病あり」でした。 後日、その御婦人と親交のあった美容室の方が、あいさつに来られて「お亡くなりになった」と聞きました。
 ペットと飼い主さん家族が、共に苦しんでいる状況がそこにあります。 特に印象深く、記憶に残っているケースは、後ほど(6、)に2題記載しておきます。
 ③、 「ペットロス傾向は?」聞きません。 「殺処分とは違う」のです。: 不思議と「ペットロスに落ち入った」と言うケースは、聞きません。 「無い」と思っています。 たぶんそれは、相談と「話し合い」と、決断に至るまでの心の準備「心構え」、そして「その事が、この子のため・幸せなのだ!」という決心に、「満足感を持てる」事にあると、私は「そばで見ていて」そう感じています。 後にお話しいたしますが「お別れを言うための2分間」は、もちろんほとんどの方が「涙を流されます」。 しかし、そのあとを「しっかりと最後を見とどければ、ある意味で満足感をもってお送りする」事が、出来るのだと信じています。 最後の言葉は「ありがとう」です。
 後日「先日は、お世話になりました」と、改めて病院にお礼に来られることは多々あります。 その時「落ち込んでいませんか?」と私はよく聞きます。 不思議と「いいえ、あの子も苦しまず・満足して逝ったと、確信しております」。ですから、「いい思い出だけが、残っていますので」。 そのような、お話しが頂ければ、その「処置の実行者の私も、満足!」と言えるものです。 それが「安楽死」と、言うものなのだと思っています。 ですから「殺処分」とは、違うのです。

2、 その日の「病院に行くまでの、手続き と 準備」は?
①、 「前準備」: ご家族で「ある程度の話し合い」を、まず持ってください。 それから動物病院で「安楽死についての不安・疑問点のご相談」を、受けてください。 それから「第2回目の、ご家族の話し合い」を持ってください。 心が決まり、問題なければ「いつ頃実施するか?の希望日」を決めてください。 それから、再度動物病院に行って「安楽死処置の申し込み」を致します。 その時には「印鑑を持参」してください。 「安楽死処置の依頼書に、署名・押印」いたします。 お家で「誰が連れて行くか?」を、話し合ってください。 また、遺体を「家に持ち帰るか? 葬儀屋さんに持ち込むか?」も、話し合っておく方が良いと思います。(5、を参照)
②、 「実施の当日」: 当院では、特別な希望がない限り、静かに実施できるように「お昼休みの時間」で、承ることが多いです。 病院に向かう前に、使っていた「いろいろなグッズは、ある程度かたづけておきましょう。」心の整理がしやすいようにです。 遺体を包めるぐらいの、大き目の「バスタオル 2枚」ご用意して持参して下さい。 尚、ペットの葬儀屋さんに、「葬儀・焼却・遺骨受け取り」をお願いする場合には、事前予約が必要です。(5、参照)

3、 「お別れを、側で見る」ことができますか?
当院では、問題なく承っています。 また、「お別れを言う2分間があります」が、そうでない病院もあります。 「安楽死の処置を、申し込み時に確認する」ことが大事です。(次の4、参照)

4、 「安楽死の処置・実行過程」を教えてください。



 
①、 再度の確認事項: 「安楽死処置を本日実行する」を、再確認します。
②、 「処置の過程」: 3本の注射を致します。 まず「1本目は、鎮静・鎮痛剤の注射」をして5分間待ちます。 「鎮静と鎮痛」が目的です。 以後は、注射を打たれる「痛み」も感じませんし、「不安」も感じません。 次に「2本目は、麻酔薬を注射」します。 5分後、「麻酔下に在る」事を確認します。 この処置により、「手術を受けている時と同じくらい、深く眠っている状態」になっています。 その後「2分後に、最後のお注射」をする旨のお話をして、私は「2分間、その場を離れます(お別れを言う時間です)」。 より深くなって「呼吸をする事を、忘れてしまう(呼吸停止が起こる)お注射です。 そして「最後、3本目のお注射」を打ちます。 多くの場合、7分間後に「死亡確認」をして、終了します。 全体で、約30分間の厳粛な工程です。

5、 その後の「遺体の 処理」の仕方は?
一般的に、「3種類」あります。
①、 葬儀屋さんに出す。: 遺体を一時「お家に持ち帰り、お通夜をする」ケース。 と、直接的に「葬儀屋さんに持ち込む」ケースがあります。 大型犬では、後者が多いです。 いずれにしろ「予約を取る」必要があります。 「お骨を頂くか、どうか?」も、決めておかなければなりません。
②、 市町村の「動物の遺体処理委託業者さん」に、お願いする。; あなたが住んでいる役所に、お聞きください。 「遺体回収処理の金額が安い」ですが、遺骨はいただけません。 交通事故も含め、その日に亡くなった動物の合同焼却です。
③、 自宅の庭に、穴を掘って埋める。: ①のお骨を頂くケースでも、最終的には同じです。 私は、チョッと深く穴を掘って、その上に「花の咲く木を植える、樹木葬」を、お勧めしています。 この場合「マダガスカル・ジャスミン(匂いバンマツリ)の花木」は、私の好みです。 春や秋に「花が咲いて、よい匂い」がして来た頃には、その子を思い出します。 そして、その事が毎年ある中で、少しずつ「忘れていく」のです。

てんかん発作の犬
 
6、 印象深く、記憶に残っている「犬の安楽死の実施ケース」、 2題。
①、安楽死実施の前に「全身を洗い、傷口を縫い合わせた」ケース。
②、安楽死の実施を見て「妙に、ご主人に感動された」ケース。

①、 安楽死実施の前に「全身を洗い、傷口を縫い合わせて、死に支度を施した。」ケース。
13歳の柴犬系雑種の子、体重は14㎏でした。 50歳代の主婦の方からの依頼でした。 その子の足が悪くなり、立って歩けない状態がしばらく続いていた。 また、その方のお母さんが入院したので、ワンちゃんの管理に手が回らない状況が続いている。 ワンちゃんは、納屋で飼われていて、管理に目が届きにくい状況であった。 ふと気づくと「体中にウジが湧いて出て、全身からくさい臭いを出している」状態で、見るに耐えられない。 かといって、この後も「十分な看護をしてやる事が、出来ない」ので、「安楽死」をお願いしたい。
ただし、この子に「大変申し訳なかったと思う」ので、わがままなお願いかも知れませんが、せめて「向こうに送る前に、きれいな体にしてやっていただけませんか?」と言うことでした。
優しいかた先生は、もちろんお引き受けいたしました。
まず「鎮痛と麻酔」、痛みを感じない状況にして、「体中のウジを、皮膚の穴から一匹一匹ピンセットで取り出しました。」4~500匹は、取ったと記憶しています。 皮膚に開いた大小の穴をきれいに洗浄して、「手術と同じように、皮膚を縫い合わせ」ました。 そして、全身をシャンプーし、乾燥しました。
そして、飼い主さん立ち合いで「安楽死を実施」したのです。
 最後の言葉は、「ありがとう。 よく頑張りましたネ」。
 頭を撫でてあげました。
 後にも先にも、「安楽死の前に、死に支度を施した」のは初めてのケースです。

②、 安楽死の実施を見て「妙に、ご主人に感動された」ケース。
動物病院をしているとやはり年間で3~4回ぐらい安楽死を依頼されることがあります。

その時には、不思議と1か月間に3件(一月に3件は、チョット多い)も依頼があった時のお話です。
一件目は、右足の付け根に出来た、大人の頭ほど大きい腫瘍を持ったワンちゃん15歳、病院で。
二件目は、てんかん発作でこん睡状態に入って4日目のワンちゃん11歳、往診先で。
三件目は、大型犬で起立不能になった少々気の荒かったワンちゃん16歳、往診先で。

どのケースもそれぞれに納得の行く理由があります。そのことは別にして、一件目の「大きな頭ぐらいの腫瘍を持っている」ワンちゃんの来院ケースです。

確認した所、24kgの体重ですがその腫瘍の大きさはまさに私の首から上の大きさでした。 手術して切り取るには右足の切断を伴います。 年齢が15歳です。 御夫婦で来院されていたので相談の結果「安楽死の依頼」が有りました。
①鎮痛剤・鎮静剤を注射して、一旦手術と同じように麻酔でワンちゃんを眠らせます。 次に御家族で片方ずつの手(確か右手が奥さん、左手が御主人だった)を持っていただいて、お別れをしていただく時間を5分間ほど持ちました。
②次の処置として、もう一段階深い麻酔深度にします。
③そして再度の確認をして、最終段階の注射をしてお別れします。

呼吸停止があり心臓の停止を確認して、全工程が済んだ後に、手を合せていた御主人が私に言ったのです。 「安楽死と言うのを初めて体験しました。   これは良い。 会いたい人が側にいて、両手を握っていてくれて、ちゃんとお別れを言えて、眠るように死んで行く。 私の最後もこんな逝き方がいいな~。 ありがとう先生」と言って頂いて、妙に深く感心されていました。 その後、奥さんが「逝く前に、目を少し開けて私を見ましたよね」。
そう、お別れを言ったのですヨ、「ありがとう」って。 キット!!

7、 記憶に残る「尊厳死」、 1題。
 【その時まで、最後まで「病気と闘い」、自分の尊厳を保って「逝った」がまん強さとやさしさの持ち主の死。】
 16年間も、ご利用いただいていた「TAちゃん」と言う「名物ダックス」が、「春分の日」に亡くなりました。 「悪性のガンの末期」でしたが、けっこう元気にその日まで頑張って「自力で歩き・オシッコ・ウンコ」もしていました。 いつも静かで、がまん強く優しい子でした。 亡くなる5日前の「心電図の波形」に、見覚えのある特殊な波形が現れ「心筋症」が示唆されました。 
 もう少し、自宅で家族と一緒に過ごし「尊厳死」を迎えられるように「内服薬を調整」しました。 そのお迎えの日の前日になり「体に着けていたパイプ類を取り外し、その日をお迎えするための最後のシャンプー」をしてあげました。 そして「最後までよく病気と戦い、頑張りました。 花丸をあげます。 もういいんだよ、長い間ありがとう。」と、お別れのご挨拶をして、いつもの5時に帰っていきました。
 「春分の日(お彼岸の中日)」の午後4時頃に、奥様から「その旨の」お電話を頂き、ご家族全員に見守られて「逝かれた」のだと確信いたしました。 この子もまた「記憶に残る、いいお別れ」でした。 

まあ、いろいろな「お別れがあります」。
それぞれが、「選択肢の一つ」であることには間違いありません。

一人で、お悩みにならないで下さい。 きっと、お近くに「ヘルプしてくださる先生が見つかる」と思いますよ。

おわりです。