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かた21動物病院

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質問箱

【 犬の外耳炎: 「犬の耳そうじ」どうするの? (Q&A:30617-1)】 30617_1

【 犬の外耳炎: 「犬の耳そうじ」どうするの? (Q&A:30617-1)】
*毎日綿棒できれいにしているのに、耳がにおう。 耳のそうじ方法、間違ってますよ!*

 

【(Q:30616-1): 犬の外耳炎: 「犬の耳そうじ」どうするの?】
うちの子モニカ(M・ダックス、9カ月齢)、最近首をよく振ります。 後ろ足で耳をよく掻いています。 以前よりもかなり耳のニオイが、強くなってきています。 毎日、綿棒できれいに耳そうじをしていますが、すぐにクサイ臭いがします。
ペットショップから、6か月前に買った時に、耳がチョット汚れていたので、その店から薦められて、お手入れセットとして「イヤーローション」も一緒に買ってきました。 指示通り毎日そのイヤーローションを使って、綿棒でゴシゴシきれいになるまで汚れを取ってきましたが、今は綿棒を入れても入れても「黄色か、赤褐色の臭う液」が付きます。
最近では、モニカが耳そうじを嫌がるようになったので、1日置きにするのですが、毎回すぐに「グチュグチュ」状態になっています。 やはり病院へ行くべきでしょうか? 状況が何だか悪くなっているようにも思います。
私の「耳そうじ」が、間違っているのですか? かた先生「教えて先生質問箱」お願いいたします。
佐賀市 モニカの姉さん

 

【(A:30616-1): 犬の外耳炎: 「犬の耳そうじ」どうするの?】
いやはや、分かりますよ。 「耳掃除は、永遠に終わりのないもの」と思っていた方が、結構多い事も知っています。 
実際、病院の診察統計のデータからしても、「外耳炎」または「耳の異常」が確認される率はかなり高いものです。
それは、自分がお風呂上りに「綿棒で耳掃除をする」ので、そのついでに「犬の耳そうじも、一緒にしてあげている」と言うのです。 それが、間違いの元なのです。
その習慣を止めないと、その子(モニカちゃん)の外耳炎治りませんョ! すぐに、心を入れ替えて、お風呂上がりの「耳そうじのお付き合い」などさせないでくださいネ。

それでは「教えて先生質問箱」始めます。 回答の順序・構成を表示いたします。
1、 犬の外耳炎は治りにくく、慢性化しやすい要因。
2、 耳の病気のサインを見落とすな。
3、 あなたがやっている、外耳炎を悪化させる「誤った」耳の処置。
4、 人に教えたくない「耳の洗浄方法」。 ここが秘密のテクニック。
5、 今は違うんです。 病院での治療はどうするの?

1、 犬の外耳炎は治りにくく、慢性化しやすい要因。
 あなたが感じている通り、耳の病気は治りにくく慢性化しやすい病気の一つです。
これには大きく分けて3つの要因が考えられています。
① 構造上の理由。 人と犬の外耳道は、構造が違うのです。(解剖学的方向から)
② 病気を発生させた理由。
③ 治りにくい、または悪化させる理由。
 の3点です。

1-① 構造上の理由 人と犬の外耳道は、構造が違うのです。(解剖学的方向から)
もちろん、耳の構造的な問題点として、垂れ耳や耳道内の密毛(毛の生えている犬種がいる)などもあります。 しかしあまり知られていない重要な犬の外耳道の構造上の特徴としては、人の外耳道のように「外側から横穴式に、直線的に鼓膜のところまで、耳道が開いている形状ではない」と言うことです。



犬の外耳道は、図のように「縦穴(垂直耳道)と横穴(水平耳道)と表現される」ごとく、外耳道の中間部で折れ曲がっている型の「L字型構造の外耳道」なのです。

だから、直線的に綿棒を入れても、掃除なんてできっこないのです。 人の耳そうじをイメージして、あなたのように綿棒を突っ込んでゴシゴシこすりつけてしまうのは、誤った方法だと言えます。 また途中に耳道の「狭い部分」もあって、そこに傷をつけてしまうと「より複雑な治療」が必要になります。

L字型外耳道以外にも構造上の問題点があります。 それは、垂れ耳の犬種や耳道内に長い毛が生えている犬種、そして外耳道に分泌物の多い犬種もいるということです。
この意味からして、ラブラドール種やスパニエル種の系統は、それだけで外耳炎を起こしやすい性質を持っていると言えます。

1-② 病気を発生させた理由。
まず初めに、何らかの病的な理由が存在していたことは十分に考えられます。 あなたのワンちゃんの場合のように、子供の頃すでに「母親から感染を受けている」場合も多々あるのです。
またアトピー性皮膚炎、アレルギーやホルモン性の病気など全身性の病気によって「耳道内にも病気がある」ものや、耳ダニなどの外部寄生虫で起こる事もあります。
また、外耳道には多少の分泌物があります。 そこに細菌や真菌(カビの仲間)などが繁殖してきて、より複雑に悪化してくるケースも増えてきています。

1-③ 治りにくい、または悪化させる理由。
あなたのモニカちゃんのように、長期間にわたり耳の調子が悪い状況が続き、毎日のように「綿棒でいじくりまわしている」と、だんだんと耳に「疼痛」を感じてくるのためにイライラ感が募ってきて、家族に対しても攻撃的になってくる事があります。
モニカちゃんは、すでに「首を振り始めています」ので危険な状態、「赤信号」が出ています。 すぐ病院に行って診療を受けるべきです。

 

つまり、原因はあれこれあるのです。 しかも、「あなた自身が、外耳炎を悪化させている」のですよ。
そもそも病気としての外耳炎が知らない間に発生してきたのなら、それはそれで「いたしかたないこととして納得する」こともできますが、私共日々診察している者から見て、飼い主さんが「良かれと思ってしたことが、外耳炎を引き起こしている、または外耳炎を悪化させている」ことが多々あるのです。
そのひとつが、誤った耳の処置です。
1 綿棒や器具により、外耳道へ傷をつけている。 (アナタです)
2 耳の中の毛を抜毛する時に、傷をつけている。
3 粉性の耳道乾燥剤や粘性の高い油性の点耳薬が、耳道内にカスとして残ってしまう。
4 不適切なイヤークリーナーの使用による、継続的な刺激処置。 (アナタです)
5 不適切なオヤツ類。 (アナタです)
 あなたが与えているオヤツ類の中で、「耳の病気を助長させている物」が、いくつかあります。 当院では耳の病気の治療中は「オヤツ禁止」です。
以上は、私共が日々の診察の中で、よくある問題点です。

 

2、 耳の病気のサインを見落とすな。
ところで、耳の病気(外耳炎)のサインをご存じですか?
「①耳のかゆみ、②耳からの悪臭、③耳の痛み」は、ワンちゃんの「耳の病気のサイン」です。

【外耳炎のサイン】
① 「耳のかゆみ」
「耳のかゆみ」があると頭を振ったり、後ろ足で耳を掻くような仕草が多くなり、それが続くと耳の後方の毛がハゲてくるようになります。
② 「耳からの悪臭」
「耳からの悪臭」は、耳の穴「外耳道」が少し腫れて、皮膚粘膜がただれてきて
「分泌物」が多くなり、そこが感染(病原体の繁殖)を受け、「化膿してきている」のです。 ①の状況より、少し悪化してきています。 耳道の周囲が、赤く見えてきているはずです。 病院にて「治療を受ける時期、のサイン」です。
 


③ 「痛みを感じている」
「痛みを感じている」は、犬がそこ(耳の周囲)を触られるのを嫌がります。 ①②の状況がさらに進み(悪化し)、その部分に「腫れ・ただれ」が発生しているのです。 「痒み」を通り越して「耳に痛み」を感じてきています。 首を傾けたり、痛みのために鳴いたり、その部分(頭部)に手を触れられるのを嫌がるようになります。 時には「痛みや苛立ち」から性質まで変わり、人を咬むような「凶暴性が出てくる」事もあります。
犬が「首を振る、臭う」様になったら、もはや「お手入れ」の範囲を超えて、「治療」が必要と言う事です。 これらの「3つのサインと行動の変化」を見逃さないでください。

3、 あなたがやっている、外耳炎を悪化させる「誤った」耳の処置。
お手紙の文面からすると:
① 綿棒に、耳の中の分泌物が黄色 ⇒ 赤褐色の臭う液が付いている。 ・・・ これは、しっかり「化膿性の菌に感染を受けている」 = 「化膿性外耳炎」です。
② 首をよく振ります。 後ろ足で耳をよく掻いています。 そして、耳掃除を嫌がるようになった。 ・・・ これは、「痒み」を通り越して、「痛み」を感じてきている。
③ 耳掃除を1日置きにするのですが、毎回すぐに「グチュグチュ」状態になっています。 ・・・ 毎日硬い綿棒で耳道を刺激する事で、耳道内の皮膚がただれて液の分泌性が更新してきている。 あなたが耳道を傷つけているのです。

 

モニカちゃんの「外耳炎の症状は、かなり進んでいる」と言えます。 もはや自分でコントロールできる状況ではありません。 動物病院で、治療を受けなければならない状況です。

④ 耳そうじは、「綿棒で耳垢(みみあか)を、こすり取る」のは間違いです。
・・・⇒ 「耳道洗浄液で、洗浄する」(後述参照)ものです。
耳そうじを、硬い綿棒(薬局で売っている綿棒)で耳道をこすっていると耳道内部の皮膚を傷つけ、分泌物が増える。 耳の防衛機能に傷をつけて感染を受けやすくしてしまったのです。 すぐやめましょう。
 もちろん私たち病院でも「柔らかい綿棒」を使用いたしますが、検査のために使用します。 また薬局で売っている「人用の綿棒は、とても硬い」ものです。  

 

※	正しい耳のケアーは、「耳道の洗浄」です。
さて対策です。 もちろん、あなたのモニカちゃんの様に「症状が進んでいる」ワンちゃんでは、先に申し上げましたように、早く病院に行って獣医師による本格的に治療を受けるべきレベルです。
ここでご指導申し上げるのは、ある程度まで回復したものに対するメンテナンスです。


4、 人に教えたくない「耳の洗浄方法」。 ここが秘密のテクニック。
⑴ 綿棒は使用しないでください。
何事もなければ、耳を触らないのが一番です。
市販の綿棒は固すぎます。 結果的に、外耳道に傷をつけて、外耳炎を悪化させている場合が多いのです。
その代わり、洗浄した時に耳を拭くための脱脂綿(カット綿)をご用意ください。



⑵ 適切な「耳の洗浄薬」を選んでください。
『ホームドクター(かかりつけの獣医師)』にお聞きになることをお薦めします。 粘性が少なく、刺激性の少ない「耳洗浄液」を使用すること。 耳の状況はどの犬も同じというわけではありません。 耳道内の耳垢(ジコウ:みみあか)の状況により、洗浄薬は変わります。 ですから、ホームドクターにお聞きするのが一番のお勧めです。

⑶ イヤークリーナーは小容量のものを選んでください。
大きなビンに入ったものは、長期間使用することにもつながります。 ゴミや雑菌がビンの中に入り込んで、「そのイヤークリーナーで耳に雑菌を流し込む」ことにもなりかねません。

⑷ 耳道内の毛を抜毛する。
定期的にトリミングに出している子は、トリマーさんに必ず「耳道の抜毛」を指示してください。
耳道内に長い毛が認められる犬種(プードル、マルチーズ、シュナウザー、ヨークシャテリア、シーズー)などは、耳の中の毛を抜く必要があります。

 

⑸ 「耳道洗浄」、 ここが秘密のテクニックです。 (解説図、参照)
「耳の洗浄液」を用いて、耳道内のゴミ・アブラ・分泌物等を洗浄します。 けっして、イヤークリーナーを綿棒に付けて『こすり取る』ような行為はしないでください。それは誤りです。

① まず、イヤークリーナー(耳洗浄液)を耳にゆっくり入れる。 上からその液の、耳道内の溜まり具合が「見えるくらい」まで入れる。

 

② 次に、耳の開口部の下2~3センチぐらいの所に耳道のL字型曲部「耳根部耳道(解説図、参照)」があるので、その部分に指の腹を当てて『モミモミ・マッサージ』を30秒間ぐらいする。

 

【注意1】 : 耳洗浄液を入れると犬は「ブルブル」と首を振るので、プロ並みに両耳を一度にしようと思わずに、片方ずつ実施してください。
③ マッサージが終わったら、犬を自由にすると「ブルブルと首を振って」、耳の中の液を振り出します。
【注意2】 : 汚れた液が飛び散りますので、お風呂場でしてください。
      「首輪とリード」を、着けておいた方がやりやすい。

 

④ その後、脱脂綿を使って、指で耳翼の内側、穴の方から外側へ振り出された汚れを拭き取ってください。
*これが、かた先生お勧めの「耳そうじ(耳道の洗浄)」方法です。

⑹ 耳洗浄は一度でキレイにならなかったら、再度行ってください。
いくら汚れていても1回3度くらいまでです。 それ以上は、この次の楽しみにしておいてください。 キレイになるまで毎日続けてください。 ゴシゴシはダメですよ。 優しく扱ってやってください。

5、 今は違うんです。 病院での治療はどうするの?
「お手入れ」と言う意味での「耳道の洗浄」を説明しましたが、もし本格的に「外耳炎の治療」が必要になっているとしたら、ためらわず「動物病院を受診「すべきです。
すでに耳道から分泌物が出ている。 くさい臭いがしている。 耳を痒がり、頭を振る。 これらは、外耳炎のサインです。 あなたのモニカちゃんはすでにこれらのサインを示しています。

 

さて、病院ではどのような治療をするのでしょうか?
もちろん最初に、耳道の状況(病勢)確認をします。
そして、「全身性の対応か?」、「局所(耳だけ)の対応か?」の治療方針を決めます。
全身性の対応は別にして、局所対応では「耳の洗浄と確認」、そして持続性のお薬を使います。 再診は一週間後です。
 つまり「できるだけ耳道は触らない」のです。
「触らない(耳道内を刺激しない)」のが、最近の治療方法です。
ご家庭では、できるだけ「何もしない」のが良いのです。 お分かりですか?

おわりです。