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かた21動物病院

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質問箱

【乳歯遺残(残存): 犬歯(乳歯)が2本残っています。 (Q&A:30615-01)】 30615_01


【乳歯遺残(残存): 犬歯(乳歯)が2本残っています。 (Q&A:30615-01)】
*抜かなかったら、問題ありますか? かた先生の犬だったら、抜きますか?*

 

【乳歯遺残(残存): 犬歯(乳歯)が2本残っています。 (Q&A:30615-01)】
*抜かなかったら、問題ありますか? かた先生の犬だったら、抜きますか?*

【(Q:30615-01): 乳歯遺残(残存): 犬歯(乳歯)が2本残っています。】 
かた先生の「教えて先生質問箱」いつも面白く読んでおります。 うちの子マッキーの歯の件で、質問させていただきます。 マッキーは、1歳半のプードルのオスです。 うちの子は口内の上の前歯の両方の横角の所に、他の歯より大きくて長い歯「チョット太いのと、やや細いの」と、それぞれ2本ずつあります。 かかりつけの病院で診ていただいたら「全身麻酔をかけて抜く」と言う事でした。
「麻酔」と言う言葉を聞いて、「チョッとドキッ!」としてしまい、ひるんでしいました。 抜かずにこのまま残しておいたら、何か問題があるのでしょうか? かた先生の犬だったら抜きますか? かた先生の「教えて先生質問箱」に投稿します。
伊万里市 うちの子マッキーのママ

【(A:30615-01): 乳歯遺残(残存): 犬歯(乳歯)が2本残っています。】
はい、「犬歯の乳歯遺残(残存)」ですね。 お安い御用です。 しかし、あなたは「質問者の禁じ手」を使っていますよ! 「先生の犬だったら?」=この表現は、こう言った「Q&AではチョットとNG」で、これは「Q&A、の難問」になってしまいます。
 
かた先生の「教えて先生質問箱」は、かた21動物病院院長の獣医師「かた先生が回答するQ&A」でして、「相棒犬パグのC・J君の飼い主」で、よろず犬猫問題にチョッと詳しい、お人よしの「片さんがQ&Aに回答」しているんではありません。
*(注) 片さんのQ&Aは、「居候犬CJシーカヤック乗船記」と「シーカヤックで遊ぼう」の、シーカヤック系の2コーナーだけです。
かた先生とお人よしの片さんが、真っ向から「回答が違う」場合も起こりえるわけですから、いつもの「スッキリした結論」が出せなくなってしまいます。 ま~今回は「イヤイヤ」ですが、ご指名ですので「かた先生と片さん両方の見解」を出しておきます。

 あなたのご質問には、獣医歯科と動物口腔衛生の方向から回答させて頂きます。



 

「教えて先生質問箱」始めます。 回答の順序・構成を表示いたします。
1、 「乳歯遺残(残存)」とは、「いつの時点」で判断するのですか?
2、 「乳歯遺残(残存)」は、」どのような基準」で判断するのですか?
3、 取る(抜く)としたら、「いつ取れば(抜けば)」良いのですか?
4、 歯を抜くとしたら、「全身麻酔は必要」ですか?
5、 乳歯遺残を「抜かずに、ほっておく」と、不都合がありますか?
6、 「抜かないでも良い方法」は、ないのですか?
7、 「かた先生家の子」だったら、抜きますか? これは、「難問」です。
8、 「麻酔が嫌いな」あなたへの、アドバイス的「結論」です。

1、 「乳歯遺残(残存)」とは、「いつの時点」で判断するのですか?
「犬歯の乳歯遺残(残存)」は、乳歯遺残の中でも「犬歯」は他の歯よりも歯の根っこが深いので、一番多いタイプの乳歯遺残です。
一般的に犬は生後3カ月齢を過ぎてくると、乳歯と永久歯の生え変わが始まります。 そして6カ月齢ぐらいには完了しているのが普通です。 中でも犬歯が最後のほうで生え変わってくるため、これで乳歯と「さようなら」ということになりますが、実際はその後に下顎の一番奥の歯、「第3後臼歯(人間で言う親知らず)」が7カ月齢ごろに生えてくるため、私どもは「8カ月齢をもって犬の歯の生え変わりは終了している事」と考えています。 もちろん、それぞれの生え変わりの時期は犬種によって大きく違っています。 この事から、8カ月齢を持って乳歯が残っていれば「乳歯遺残(残存)」と判断されます。 あなたのマッキー君は、1歳半で「乳歯の犬歯が残っている」ので、もう立派に「乳歯遺残(残存)症」と言う事が出来ます。

2、 「乳歯遺残(残存)」は、」どのような基準」で判断するのですか?
獣医歯科領域での区分は、かなり短い期間で判断しています。 要するに「乳歯と永久歯との共存期間」が問題なので、「その期間が正常領域か異常域か?」ということで判断しています。 また「各歯の種類と存在場所」によって、その共存期間が違いますので、それを「下の表」に表しておきました。 その基準によると上顎の犬歯の正常な共存期間は2週間と言う事が表からも判ります。

上犬歯の場合、永久歯が出てきて(萌出という)2週間経ってもまだぐらぐらせずに乳歯が残っている場合、それを「乳歯の遺残(残存)症」とカルテに表記されます。
 それが乳歯遺残症です。

 

3、 取る(抜く)としたら、「いつ取れば(抜けば)」良いのですか?
それはもう「気づいた段階で、抜いてしまうのが良い」と言う事になっています。
その乳歯遺残症は最近では、「より小さく犬を改良?」していることと関係があるのかどうかはまだはっきりしていませんが、この乳歯残遺は超小型犬・小型犬に分類される犬種に結構多いという事も分かっています。 中には「全歯列、キッチリと2段(2列)に歯が残っていた」珍しい例もあり、その犬に遭遇した時には、思わず「サメみたいだね!」と言ってしまいました。

つまり、8カ月齢を超えて、残存している場合には、「いつ抜歯しても良い」と判断できます。 しかし後で述べますが、抜歯するのに「全身麻酔が必要です」ので、次に麻酔をしなければならない時に、「残存乳歯(遺残乳歯)の抜歯」も一緒にやってもらう場合もあり得ます。

 

4、 歯を抜くとしたら、「全身麻酔は必要」ですか?
ハイ、その通りです。 人間でも歯を抜く場合、局所麻酔ぐらいやりますよね。 犬・猫で、口の内に器具を入れられ歯や歯ぐきをひっぱられて、ア~と口を開けたままじっとしている子などは見たことがありません。 無麻酔で口腔内を触ると言う行為は、その瞬間に「大騒ぎになり、死に物狂いで」抵抗するので、犬・猫にとっても獣医さんにとっても大変「危険な行為」です。

⑴ やはり「全身麻酔をして、鎮痛剤をも使ってやる必要があります」。
「手術を受けるのと、全く同じ事」と思ってください。 当然、それなりのリスクがある事も理解していただかなくてはなりません。 「100%安全な麻酔方法」と言うのは、存在いたしません。 「抜歯」というのは、口腔の外科手術です。 
 また逆に言えば、全身麻酔下で「グッスリ寝ていて、目が覚めたら全部終わっていた。」という方が、犬・猫にとっても「楽だ」と思います。 今は、その後の「鎮痛処置」も、大変良くなっています。
鎮痛処置も全身麻酔も「抜歯」と言う口腔内手術には、「絶対的に、必要で有効な」不可欠な対応処置です。

⑵ 今抜歯するのではなく、もう少し後で「歯石除去の時に抜歯」する。
乳歯遺残が有ろうと無かろうと、一般的に犬の平均寿命の13.5年間と言う期間には、口腔衛生上でいずれ「歯石除去処置」が必要になります。 当然その歯石除去処置でも「全身麻酔が必要」です。
いずれ実施するだろう「全身麻酔下で行う歯石除去」の作業中に、「抜歯する」事も、しばしば経験する事です。
それは、犬の口の中を隅々まで確認できるチャンスは、「全身麻酔をしているこの時」しか無いからです。
その歯石除去に伴う口腔検査中に「腫瘍」を発見して、急遽「その腫瘍を切り取った」と言うこともたびたびあることです。 まとめてやっちゃう方法です。
人の口腔歯科医療のように、「毎日、少しづつ頻回の処置をして、2週間通院してください」と、いうわけにはいかないのです。

5、 乳歯遺残を「抜かずに、ほっておく」と、不都合がありますか?
ウム~、難しい判断になると思います。 これは歯の問題なので、「直接的に生命にかかわるような問題」を起こすというよりも、結果的に間接的悪影響が出るというふうに考えるからです。 

 

しかし、獣医学的には乳歯が長くそこにあるからということでの不都合は、
1 永久歯の生えてくる時期が遅れる。
2 永久歯の生える位置がずれる。
3 噛み合わせが悪くなることがある(特に切歯〈前歯〉と犬歯)。
4 歯石・歯垢がたまりやすく、歯周病の原因になる。 ※
5 口臭及び美容的によくない。

等が問題として挙げられますが、しかしマッキィーちゃんの年齢は1歳半です。 永久歯はすでに生えています。 するとやはり4・5の将来の「歯石と口臭問題」としてとらへる事になります。 が、もちろん「歯石が多くなると、口臭が強く口がクサイ」だけではなく「心臓病との関係もある」という風に示唆されています。

6、 「抜かないでも良い方法」は、ないのですか?
 無い事はありませんが、「確実な方法」ではありません。 
⑴、 「噛み噛みロープ」を噛まして引っ張り遊びをする。
3カ月齢ぐらいから、「ロープにひもを着けて」猫ジャラシや魚釣り道具のようなものを作って、イヌにくわえさせて「引っ張り遊び」をします。 うまく乳歯に引っ掛かると、刺激になって乳歯がグラグラしてきて取れることがあります。 もちろん、永久歯はこの程度では取れません。 また、噛み噛みロープは、「だ液の分泌量を増し」口腔の掃除(歯磨き効果)になります。

⑵、 毎日の「歯磨き」を、しっかりとする。
 お勧めの方法は、あきらめて「毎日の歯磨き」に徹するのです。 前項の 「5、」で申し上げましたように、歯列の問題以外は「歯石の付着」なのです。 マッキーちゃんの年齢が、1歳半ならまだ「間に合う」かもしれません。
毎日、歯磨きをしてください。 当院の患者さん中には、立派な「歯磨き上手さん」が数人いらっしゃいます。

*歯磨きの方法は、かた先生の「教えて先生質問箱」バックナンバーの「犬・猫の歯磨き、どうしたらいいの?」(パート1)と(パート2)を見てください。*

先日(5月4日)にも「16歳ダックスのM・Tちゃん」が、フィラリアの予防注射で来院しました。 その子は、「歯磨きを子犬の時から、しっかりとしている子」でした。 確認しましたが「立派にきれい」でした。 16歳になっても「歯石取り」の必要性は、「全く無い」と言っても良い子でした。
 もちろん、全身はだいぶ衰えてきていましたが、「心臓はしっかり」していました。 かた先生は「よっしゃ! もうちょっとイケそうや! がんばりや!」と言って「太鼓判」を押しました。 ご褒美に「大きいビスケットを3っつ」あげました。 もちろんその子には「お家でお母さんがくれるけれども、先生があげたんだからネ!」とシッカリ言って聞かせてあげました。

⑶、 ドライフードと水のみ。
 「缶やパウチ(ウエットフード)」は与えない。
「歯石の付着」の研究ではっきりしている事に、「ウエットフード(缶やパウチ)」のように水分が多いフードを与えられている犬は、ドライフードと水だけで育てられている犬より、「歯石の付着量が多い」と言う事が分かっています。 だ液の分泌量が違っているからです。 だ液の分泌量は、歯石の付着量に関係します。

 

⑷、 ドライフードも、「ポリリン酸塩」配合のフードを使用する。
 最近、「デンタルデイフェンス・システム」と言う理論で「ポリリン酸塩」配合(コーティング)のフードが増えています。 フードを選ぶ時に「原材料」が書いてある所を、よく見て「ポリリン酸塩」の表示のあるフードを選ぶ事。
例: ①アイムス・ベェテリナリーフオーミュラー、
②ロイヤルカナン・ベェッツプランシリーズ
 「ポリリン酸塩のコーテイングフード」の使用では、「歯石の付着度」が明らかに違ってきます。 もちろん歯石は、5年10年の単位で評価するものです。 1週間2週間の単位で、判断するものではありません。 

7、 「かた先生家の子」だったら、抜きますか? これは、「難問」です。
 さてこれは、かた先生の教えて先生質問箱「Q&Aの難問」です。
4代目のパグ「居候犬C・J、改名、相棒犬C・J」君を飼っています。 時々口腔も確認しますが「乳歯遺残」はありません。 歯石の付着も「もう10歳を超えていると言うのに、優等生」です。 しかし質問は「仮定であっても」の想定です。 お答えします。

もし、かた先生の相棒犬CJ君に「乳歯遺残があった」なら、抜きません!!

私の犬の手術を、私がしても「料金を頂けないから」と言う意味ではありません。 皆さん方に、「処置せずに放置していたら、どうなるか?」の見本を作るためです。 獣医師は「悪いモデル」が、欲しいのです。 「大変だ」と言うようになって「治療する練習犬」が欲しいのです。 CJ君は、「居候犬から相棒犬に昇格」しているからです。
 今は新しいフードや薬が開発されたり、新しい治療法がヒラメクと、「相棒犬は、実験犬になる役割」です。 毎年いろいろな実験課題に挑戦してくれています。 CJ君は、実験代理犬を務めてくれる、心強い「相棒犬」です。

 

実際の所では、日々の健康状況の確認は「係長のお姉さん」が、しっかりと観察し記録していてくれます。 異常があると「直ぐに報告」してくれますし、体重管理も含めて少し「過保護ではないか?」と思えるぐらいに、チエックされています。

ネ! 予想を裏切る回答だったでしょう。 ・・・

8、 「麻酔が嫌いな」あなたへの、アドバイス的「結論」です。
⑴ 遺残(残存)乳歯を、抜かずに放っておいたら、歯石の着くのが早まる。
⑵ 今すぐに抜歯せず、「歯石除去」の時期を少し早めて、その時に「抜歯」する。
⑶ 「歯磨き」は、しっかりとやりなさい。
⑷ 食べ物は、ドライフードと水だけです。 「缶やパウチ」は、ダメです。

おわりです。