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かた21動物病院

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質問箱

【犬にも外面(そとづら)ってあるの? (Q&A:30605-01)】 30605-01

【犬にも外面(そとづら)ってあるの? (Q&A:30605-01)】
*	家であばれん坊、 お外でいい子。 どうして? *

 

【犬にも外面(そとづら)ってあるの? (Q&A:30605-01)】
*	家であばれん坊、 お外でいい子。 どうして? *

【Q:30605-01 犬にも外面(そとづら)ってあるの? 】
うちの甥っ子は1才ですが、おうちでは全く片付けなどをしたがらないのに、風邪を引いて病院へ行くと、絵本やおもちゃなど遊んだものを自らキレイに片付け、周囲の人に「いい子ねぇ~」「おりこうねぇ~」と言われてニコニコしています。
こんなに小さいのに、「外面」ってあるんですね。
イヌにも外面ってあるんでしょうか?
うちの犬(柴犬マロ、5歳)も 家じゃ、「あばれん坊」なのに、外で他の人や犬に会うと「おりこうさん」にしています。
答えが難しい質問かもしれませんが、かた先生流に回答してください。
太宰府市 A・H (柴犬マロを飼ってます)

【A:30605-01 犬にも外面(そとづら)ってあるの? 】
病院に来る子の中で80%ぐらいの子たちが、注射も投薬も検査も「良い子にしていて、おとなしく」受けています。 
私が、「処置を終えて、いい子でした」と、頭をなでてやると。 飼い主さんが「どうしてここに来ると、そんなにいい子ぶってるの?」と言うような場面は、よくある事です。
もちろん、犬のほうにも「良い子でいたい」という気持ちは十二分にあるものです。 そして飼い主さんにはもちろん、周囲の人たちにも「気に入られて楽しくしていたい」と言う願望は、イヌにも、ネコにも、人と一緒に生活している「他の動物」にも当然あるものです。 しかし、自分のお家ではともかく「一歩外に出ると、分からない事がいっぱい」あります。 パニックになってしまう事もあるかもしれません。   

それを、「恐怖心を持って、身構え」対応するか? 「ご挨拶をして、仲間」として受け入れて頂くか? 自分の縄張りを出て、お散歩に出る「イヌ」にとって、それは「大冒険の旅」なのです。

お家の中では「あばれん坊」、お外では「おりこう」さん。 あたかも「二重人格」、どうしてこんな事をするのか? どっちが本当のうちの子か? と言うご質問ですね。
「教えて先生質問箱」承りました。 あなたの質問には「動物行動学的方向」から回答致します。

 

では、「教えて先生質問箱」を始めます。 回答の順序・構成を表示いたします。
1、 イヌも人と同じ様な行動を取ります。 「群社会を作る動物」の共通行動です。
2、 家の中では「あばれん坊」は、群れ社会を確認し、その階級への挑戦です。
3、 外で「ほかの犬や人に出会うと、おりこうさん」は、イヌ社会のルールです。
4、 イヌは「世界共通語」で話します。 それはイヌ語、「カーミング・シグナル」と言います。
5、 その子は「平和主義者で、良い子」です。


1、 イヌも人と同じ様な行動を取ります。 「群社会を作る動物」の共通行動です。

病院に来る子の中には、もちろん神経質で診察の為に「触ろうとすると、歯をむき出しにして咬みつこうとする子」も時々います。 また、飼い主さんに抱かれている時には「ウ~と威嚇し、手を出そうものなら咬もうとする」が、いったん「こちら側に移ると、まったく態度が逆転し従順になる」逆豹変型の子もいます。 しかし、80%ぐらいの子たちが、注射も投薬も検査も「良い子にしていて、おとなしく」受けています。

30%ぐらいの子は「かなりフレンドリー」で、診察台の上でも「尾っぽを振ってヘラヘラ」としています。 聴診器を当てるために前かがみになると、「私の口を舐めようと」試みる子もいます。 もちろんその時私は、その子に向かって「お前のチュウなんかいらん!」とビシッと言って、その子をケンセイします。 がしかし、1/3ぐらいの子には「ペロリぶっちゅとモロチュ」を、かまされます。

また、40%ぐらいの子が「私から見て、ほぼ横向きになって、腹を床に付けて(伏せの状態)または、お座りの姿勢で」触られるのを待っています。 中には、その時「おしっこをチョビッと(通称;ウレション)する」子もいます。

これらの行動は、犬が自分たちの言語で「争いごとを避けようとする表現行動(ボデイー・ランゲージ)」を使って、私に話しかけているのです。
目的は、イヌが「他の犬、または人」を意識して、「仲良くして行きたい(仲良く扱ってくれ)」と訴えかけている「アピール行動」で、原始的ではありますが「立派な言語(犬の原始的言語)」です。 



その事はあたかも、私たち人が他の人に対面して「笑顔を作って、こんにちは」とか、「よろしくお願いいたします」とか言う表現方法、「ご挨拶」と同じ行動です。  
それらの「挨拶的行動表現」を群社会を作る動物の中で、特にイヌがよりはっきりと他者に表現できる「伝え示す能力(表現力)」を持ち備えていたからこそ、祖先であるオオカミから進化し30,000年もかけてヒトと出会い、ヒトと近づき会い「ヒト社会に認められる、コンパニオン(伴侶)アニマル(動物)としての特別な地位を築き、仲間入りすることができた」明らかな証です。 

私を「受け入れて、仲良く」していただきたい。 これは人でも動物でも、一般的には「同じ気持ち」で、「同じ様な表現行動」を取ります。 特に、「弱い幼児期」には顕著に認められる犬の行動です。 半分は「祖先から受け継いできた」表現行動であり、半分は「幼少期に親兄弟や群仲間から学んできた」表現行動です。

イギリスのレポート(1992年)では、その群社会に「伝え会う事が出来る、重要な表現能力である、群環境対応(社会化順化)」は、生後8週齢ぐらいまでに「環境対応(社会化順応)性」は習得される。」とされています。 「挨拶的行動表現」は、群社会を取る動物の「共通行動」マナーです。

2、 家の中では「あばれん坊」は、群れ社会を確認し、その階級への挑戦です。

 

飼い犬の場合、特に室内犬では「お家の中」は自分の縄張り(テリトリー)です。 この中で犬は、あなたを含めた「自分たちを一つの群(むれ)」、つまり社会集団である事をまず認識します。 そして、その中での自分のポジション(階級的位置)を確認しようとします。 これは基本的に「どれだけの範囲が自分に許されて、行動できるか?」への確認・チャレンジであって、ちょこまかと走り回ったり、ワンワンと吠えたり、ひっかいたり咬みついたり、ウーと唸ったり、時には破壊行為に及んだりというように、ある意味で傍若無人に行動を取るのです。
あなたが「ダメの指示を出す」まで犬は許容範囲と判断し、行動をエスカレートしていきます。 つまり「甘え」としての行動(確信犯)です。 この行動を「人社会へ指導・制御」しようとする行為が「躾(しつけ)」と「服従訓練(トレーニング)」です。

さて、盲導犬に代表される「介助犬」のように、「おとなしく」いつも「おりこうさん」がお好みですか? 多少「こうるさい」けれども、あなたを意識しシッポを振り続け、あなたを困らせる「小悪魔的ワンちゃん」がお好みですか? いずれにしろ5歳を超え(人年齢で小型犬5歳=34歳~大型犬で5歳は40歳齢ぐらい)加齢してくると、顔に白毛も出て落ち着きのある子になってくるものです。 しかし例外として統計的には14%ぐらいの犬では「咬みすけ・騒ぎイヌとして、さらにエスカレート」してくる子もいます。
どのレベルまでの行動を、許可するかは「あなた、飼い主次第」です。
いずれにしろ、2才半(肉体的・精神的成熟期)を超えるまでは、群社会の中で取る犬の本能的行動として、「自分の縄張り(テリトリー)」の認識を持ち、その中での「自分の階級的位置」を認識します。 そして自己勢力拡大(群社会を生きぬく本能)に挑戦しようと企て続けるのです。

つまり「家の中」という場はすべてが許される自分の「縄張り内」、自分の世界なのです。 だから明確な「指示」「命令」がない限り、決して「おりこうさん」ではありません。 それを許しているのはあなたです。
 家族の留守中にワンワン騒ぎ、ご近所から苦情が出るような「一人でお留守番できない犬」にさせるのもあなたです。 適切な「指示・命令」を出して、適切な「家の中での地位とマナー」を犬に教えて、その地位で安心させてあげられるのも、その群社会の「リーダーである、あなたの責任」なのです。

3、 外で「ほかの犬や人に出会うと、おりこうさん」は、イヌ社会のルールです。

 

いつもの散歩道は、「自分の縄張り外である」が既知の(見知っている)世界。 しかし、そこは他の犬(動物)や人と共有する世界。 ですから「自由でありたい衝動」を感じつつも、ライバルがいる「チョットおっかない世界」であることに、犬も気づいているのです。
 しかし、「自分の勢力拡大」だけでは、他の犬や人に出会った場合には、当然「争いごと」が起こります。 「外社会はそういう場所」だと言う事は、もちろんあなたの犬にも「十分に認識」しています。 だから、家の中で傍若無人にふるまっている子でも、お散歩をしようと外に出ると、緊張のあまり「座り込んで一歩も歩かない子」もいるのです。

文面から、「外ではおりこうさん、いい子」ですので、イヌ語での「ご挨拶表現」は出来ていると理解できます。 攻撃的な行動、騒がしく吠えたてる行動、ぐんぐん引っ張って歩く行動などは無く、ゆっくりと尾っぽを振って「フレンドリーにヘラヘラ」とお散歩を楽しんでいるのでしょう。
人や他の犬に出会ったら「直線的に近づくのでは無く、少し緩やかなカーブを描いて近づいたり、座って動かなかったり、寝転んでお腹を見せたり、お尻の臭いを嗅いだり・嗅がせたり」と言うような友好表現をしているのでしょう。 外交的儀礼にたけているのです。 交際上手なのです。
 
相互の「平和的接触」は、イヌ社会・ヒト社会のルールであり、「それをうまく表現する事」は、また「イヌ社会のマナー」でもあります。 コンパニオン(伴侶)アニマル(動物)として80%の犬は、その事を「十分に理解し、実行」しているのです。

 残念ながら一方で、統計的に14%ぐらいの犬たちには、どうしても「その平和的接触、攻撃しないという表現」を、出し示す事が出来ない子がいることも事実です。

 攻撃的ではないのですが、極度の内弁慶な子もいます。 「外でオシッコ・ウンコの散歩が出来ない子」たちです。 私どもの病院で「ホテル預かり」として入ってくる子の中でも、20%ぐらいの子が「お散歩で歩けない・オシッコ・ウンコが出来ない内気な子」がいます。
その子たちは、子犬期の特に、生後8週齢(基礎教育期)までの間に、他の犬や人との接触をする「社会化経験を、受けるチャンスを逃した」犬たちです。 またその後においても、飼い主さんから「この子は散歩が嫌いなんだ!」と、間違ったイメージを持たれてしまった子たちです。
イヌ社会でも・人社会でも、幼児教育の重要性が、ここでも感じられます。

もう一つ言えることは、「生後に学んだ知識やマナーは、追加的反復刺激として継続されないと、忘れてしまう」と言う事も分かっています。 幼少期の早期に「他の犬や人との接触」と、その後のお散歩に出るのは「外の社会を学ぶ」と言う事で、幼稚園や小学校「低学年児童の遠足(校外学習)」みたいな事で、イヌの「精神構造を安定」させるためには、大変良い事で必要な事なのです。

4、 イヌは「世界共通語」で話します。 それはイヌ語、「カーミング(落ち着かせる)・シグナル(合図)」と言います。

 

イヌの本能として、常に「自分の勢力・地位を拡大」または「自己の存在をアピール」する一方で、「群社会の一員としての地位」を保とうとする本能もあります。 群社会で生活する以上、個々の者が他の者とのコミュニュケーションを取る必要があります。 
その犬の群社会の「マナーやルールに従えなければ」、その群から外れねばなりません。 特に「争わずに、ルールに従う・服従する」と言うメッセージを発信する事は、時に「命に係わるやもしれないほど」の重要なコミュニケーション(意思の伝達・表現)」でもあります。 

その為にイヌ属が使用する「犬の群社会での、意思表現とその伝達方法」の一つに「カーミング・シグナル(イヌ属が示すボディーランゲージによる平和維持のサイン)」というものがあることが分かっています。
 ドイツの犬も、イギリスの犬も、ベルギー・オランダ・スペイン・カナダ・アメリカ・フィリッピンやタイの犬も、オーストラリアはもちろん日本の犬にも同じように伝わる「カーミング・シグナルは、イヌ語で世界共通語」です。

この回答の初めに「診察台に上がった犬のしぐさ」を表現しました。 また、ほかにも病院でよく見かける下記6項目の「しぐさ」は、それぞれの「しぐさ(動作)」に意味があって、その「カーミング(落ち着かせる)シグナル(合図)」で、私に話しかけているのです。
① 「かなりフレンドリー」なしぐさで、診察台の上でも「尾っぽを振ってヘラヘラ」としている子。
② 「私の口を舐めようと」試みる子、「ペロリぶっちゅとモロチュ」を、かます子。
③ 「私から見て、ほぼ横向きになって、腹を床に付けて(伏せの状態)または、お座りの状態」で触られるのを待っている子。
④ 中には、その時「おしっこをチョビッと(通称;ウレション)する」子もいます。
⑤ 寝転んで、オマタも開き、お腹を見せる子。
⑥ 正面から、伏せをしてお尻をあげて、尾っぽを振り、鼻息をフッと出して(一瞬、うなずくような動作)遊びに誘う子もいます。

 

「カーミング・シグナルはイヌ語」です。
これらの「しぐさ(動作)」は、1996年にノルウェーで発表(T.ルーカス著「世界の犬は共通語を話す」)された時には22種類、現在では「27種類(その後にさらに追加され30種類)のコミュニュケーション(表現)動作」があることが確認されています。

たぶんあなたも、日頃のマロちゃんの「しぐさ」で、すでに理解している「しぐさ」がいくつかあると思います。

これは犬同士が、または犬が人もしくは自分が認める相手と対峙した時に示す動作で、「あなたに危害を与えません。仲良くしてください」と、表現しているボディーランゲージです。 「バウリンガル」よりも正しく犬同士には伝わります。 私にも伝わります。

5、 その子は「平和主義者で、良い子です。 イヌの優等生です。」です。

それらの動作(シグナル;合図)が、カーミング(落ち着き)と名付けられたように、周りの人から見て「とってもおりこうさん」に見える「しぐさ」なので、おそらくあなたは「外面(ずら)がいい」と思われたのでしょう。
質問の文面から、間違いなくその子は「カーミング・シグナル」を、相手の犬や人に表現しているのです。

この「イヌ属の表現動作」を、あなたのワンちゃんは「イヌ属の一員として祖先から引き継ぎ」、生後8週齢迄に「他のイヌやヒトへの信頼と、そのコミュニュケーション方法の基礎教育」を親・兄弟及び管理者から受け、また生後12週齢までに親をはじめ同腹の子どもたちとの間で、しっかりと学習し実習し完成させたのです。 そしてあなたはまた「ご家庭で、または散歩という形で」ヒト社会への信頼と環境順応教育を、反復継続してきたと言えます。

ぜひ、あなたのワンちゃんに「外面がいいのは、犬の優等生だ!」と、かた先生がそう言って「💮、褒めていた」とお伝えいただければ幸いです。

おわりです。